時代は人口減少期に差し掛かり、地方都市の多くは、行政サービスや交通機関などの生活インフラの集約化・効率化が課題となっている。ところが限界分譲地を多く抱えた自治体は、現状ではそのスタートラインに立つことすらもできていないのだ。

「限界分譲地」が問いかけるもの

分譲地内には車両置場として利用されている区画があった。今回、当記事執筆のために数年ぶりに確認してみると、無造作に置かれた車両は撤去され、代わりに立派な倉庫が建っていた。

新築された倉庫(左側)
筆者提供
新築された倉庫(左側)。
以前は車両置場だった(2018年撮影)
筆者提供
以前は車両置場だった(2018年撮影)。

住環境を考えれば歓迎すべき変化だが、そもそも実需を全く考慮されないまま乱開発された旧分譲地を、今後も虫食い状に再利用を続けていくことが、都市計画や住宅政策の視点から見て最適解と言えるのだろうか――。

筆者自身、乱開発の産物である千葉県内の僻地の分譲地で暮らしており、管理者を失った自宅周辺の空き地の整備を続けている。だからこそ、その思いを拭えずにいる。

ある区画は流動性を失うほどまで荒廃・放棄される一方で、真隣の区画は宅地として利用され、住民が生活をしている。限界分譲地に住むことは可能だが、自治会は機能せず、道路や公園は雑草で埋もれることもよくある。

郊外の衰退・縮小とはよく言うが、現実にはきれいに整然と縮小しているのではなく、虫食い上に放棄された管理不全の住宅地の割合が、静かに拡大しているのだ。

場当たり的な住宅政策の無策ぶり、地価の下落による資産価値の消失、住環境の荒廃……。限界分譲地の問題は、都市問題の負の側面をもっともわかりやすい形で地域社会に突きつけている。

限界分譲地
筆者提供
地域の衰退と虫食い上の再利用が同時進行で進む限界分譲地は、無策な都市計画の象徴とも言える光景だ。
【関連記事】
だから175平米26万円でも売れない…東京から1時間でも「擁壁のある住宅地」が放置される理由
なぜ勝手に内見を断っていたのか…不動産会社の「値下げしないと売れない」を信じてはいけないワケ
「実家に誰も住まなくなったのに売却できない…」58歳ひとり息子がバカ高い"維持費"を払い続けるワケ
「駅前持ち家物件の売却益1800万円で積極投資」そんな年収1000万円世帯が"転落必至"と断言できる理由
東京随一の"セレブ通り"を走る富裕層が「テスラやレクサス」を選ばないワケ