応用してみよう。相手にきついことを言ってしまった。そこで一言。
「私、傷つけやすい体質なんです」
次も実際に耳にした会話から。
「偶数日は私が女房に謝るんですよ」
何も根拠はないのに「今日は偶数日だから」と、強引に理由づけをしているところが可笑しい。私の「勝子」という短編(集英社文庫『甘い闇』所収)は、このときの会話がヒントになって生まれたものだ。こう使うといい。
「なんだか派手な格好だな」
「いやあ、偶数日はちょっと派手めにしていまして」
もちろん、その日が奇数日なら「奇数日は……」となる。
大人になると、年齢を聞かれても素直には答えたくない場合がある。44歳の女性が自己紹介した。
「39歳と68カ月です」
私もあるとき、年下の人気作家を引き合いに出して言ってみた。
「私は宮部みゆきさんと同じ年です」
周囲は「そんな馬鹿な!」と言いたげだ。そこで一拍おいてタネ明かし。
「同じ35年生まれですから。宮部さんは昭和35年、私は1935年」
娘が小学校の低学年だったころ。算数の成績がふるわないので、「もっと算数を好きにならないと駄目じゃないか」と小言を言った。すると――。
「私は算数が嫌いじゃない。算数が私を嫌うの」
うっかり説得されそうになって困った。詭弁が笑いを誘う例である。
※すべて雑誌掲載当時
(面澤淳市=構成 相澤 正=撮影)