情報過多のこの時代だからこそ、シンプルな言葉が心に響く。短編小説の名手が気の利いた表現、言い回しを指南する。
作家 阿刀田 高
1935年、東京生まれ。国立国会図書館勤務時代に執筆活動を開始。短編集『ナポレオン狂』で第81回直木賞受賞。日本ペンクラブ会長、直木賞の選考委員などを務める。

誰が誰に向けて発するか、どのような状況で発するか。それによって意味合いが異なるのが言葉である。万能薬のように何にでも利く言い方は存在しない。あ情報過多のこの時代だからこそ、シンプルな言葉が心に響く。短編小説の名手が気の利いた表現、言い回しを指南する。ったとしても、便利に使われるうちに手垢まみれになり、本来持っていた輝きをなくしてしまう。

よい例が「粛々(しゅくしゅく)」。大臣答弁で「その件につきましては粛々と対処してまいります」などと使う。