取引先の部長に、せめて名前だけでも覚えてもらいたい。そういうときは、自分の姓名をもう一度見直してみることだ。たとえば、こういう名乗り方をするセールスマンがいる。

作家 阿刀田 高
1935年、東京生まれ。国立国会図書館勤務時代に執筆活動を開始。短編集『ナポレオン狂』で第81回直木賞受賞。日本ペンクラブ会長、直木賞の選考委員などを務める。

「甘さが取り柄の佐藤(砂糖)です」

「出世魚の鈴木(鱸(すずき))です」

もう少し“高度”になると、

「技術はハイブリッド、私はハイブリッジです」

ハイ=高い、ブリッジ=橋、つまり高橋さんだ。少々気恥ずかしいかもしれないが、なに、天下のブリヂストンも創業者の石橋姓を英語に直訳したのが社名の由来。臆することはないのである。

うまい語呂合わせができなくても、次のような言い方なら誰でもできる。

「明日トイレにいらしたときで結構ですから、私の顔と名前をちょっと思い出してください」

私の姓名は「あとうだ・たかし」と読むのが本来だが、「あとだ・こう」とも読むことができる。ある人から、

「『あと、抱こう』だなんて、たいへん太い名前だねえ」

(面澤淳市=構成 相澤 正=撮影)

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