「20万を超える解散命令請求署名」は国を動かすのか
12月22日、旧統一教会が岸田文雄首相と永岡桂子文部科学相宛に、解散命令の請求をしないように求める、約2万3000人の信者らの嘆願書を送った、と報じられました。
これにはどんな意味があるのか。詳細は後述しますが、旧統一教会がこうした動きをせずにいられなかったのは、9日、文化庁に対して、旧統一教会2世元信者・小川さゆりさんや、全国統一教会被害者家族の会の石原正志副会長らから統一教会の解散命令請求を求める申込書と、その趣旨に賛同した人たちのネット署名が提出されことがあります。署名は「Change.org」で10月17日から始まり20万筆を超えました。同サイトでの歴代4位の多さだそうです。
14日には文部科学省が解散命令請求に向けて、2度目の質問書を旧統一教会に送付しました。その回答期限は2023年1月6日。その期日が近づいてきています。はたして国は国民が注目する中、どのような判断を下すでしょうか。
毎日新聞の世論調査では、すでに8割以上の人たちが「解散請求すべき」と回答しており、先の20万筆にもなるネットはまさにその表れのひとつといえます。国は、旧統一教会に対する国民の声として重く受け止めざるをえないはずです。
しかも、旧統一教会は養子縁組あっせん問題に関する、厚生労働省からの質問の半数以上に回答拒否をしています。もし今後も同じ回答をするならば、解散命令の請求の動きが加速する可能性があります。
解散命令請求を求める署名会見に関してすでに報道されていますが、なぜ20万を超える署名が集まったのかについて報じたところはありませんでした。かつて「中の人」で10年間信者活動をしたあと、脱会後は教団事情をウオッチしてきた目線から少し解説したいと思います。
会見には、旧統一教会の2世元信者、ジャーナリスト鈴木エイトさん、豊田通信さん(日本基督教団カルト問題連絡会世話人)など9人が記者会見に臨みました。今回の署名の呼びかけ人は、個人・団体合わせて44もの数に上ります。
「今回の署名活動は、フォトジャーナリストの藤田庄一氏の発案で始まった」と、署名の取りまとめ責任者であるジャーナリスト・藤倉喜郎さんから説明がありました。
会見の始まる前、10年以上ぶりにお会いした藤田さんと少し話をする機会がありました。藤田さんはオウム事件や統一教会の問題など、カルト思想を持つ宗教団体の事情を以前から追及してきた方です。藤田さんも筆者も世に出した文章で訴えられて、裁判所で「お互いに頑張りましょう」と声を掛け合ったこともある“戦友”です。
会見場に1世元信者の姿がなかったのは残念ですが、全国統一教会被害者家族の会の石原正志副会長がいたので、安心しました。というのも、石原さんは自らも信者だった家族を救い、誰よりも元信者や信者を持つ家族の心がわかる方で、信者救出の第一線に立ってきた方だからです。
このように昔から旧統一教会の問題に携わってきた人たちが呼びかけ人になったことが、多くの人たちから賛同を得られた理由の一つと考えます。