唯一、仲間入りできなかった動物は…
ただ、それでもコアラの耳を再現するのは難しかったという。だから、コアラはたべっ子どうぶつには入っていない。
たべっ子どうぶつの動物の数は46種類。動物四十七士よりも1種類少ない。それはコアラを外したからだ。
広報の吉村さんは言う。
「たべっ子どうぶつは薄焼きビスケットなんです。コアラを薄焼きにしようとしたところ、何度やっても耳の部分が欠けてしまい、それで仲間入りできなかったのです」
創業者は子ども向けの菓子には教育性を入れたいと考える人だった。そんな彼がくふうしたのはビスケットに動物の名前を英語で印字したこと。
猫がCAT、犬がDOGくらいなら子どもだって知っている。しかし、オットセイがFURSEAL、ヤマアラシがPORCUPINE、リスがSQUIRRELなんてのは大人でもまず知らないのではないか。
たべっ子どうぶつは大人が食べても英単語の勉強になる。ロングセラーになっているのは味だけでなく、教育性という面も少なくない。
なお、動物四十七士の厚焼きビスケットの味は後継の商品「厚焼きたべっ子どうぶつSOY(大豆)」で確かめることができる。わたしも食べてみたけれど、厚焼きと薄焼きではかなり食感が違う。幼児の小さな口に合うのは薄焼きの、たべっ子どうぶつだとわかった。
長く愛されるために、味わいや包装はあまり変えない
たべっ子どうぶつ、アスパラガスなど同社にはヒット商品を開発した後、ロングセラーにするための方式がある。
それは味の横展開と食べ方のアレンジを提案すること。
味の横展開についてはギンビスだけに限ったことではない。だが、ギンビスはたべっ子どうぶつの場合、基本のバター味のほか、「白いたべっ子どうぶつ」「たべっ子どうぶつココナッツミルク味」などの横展開をしている。
アスパラガスでも同様だ。基本のアスパラガスを出しつつ、「いちごチョコがしみこんだアスパラガス」とか「ミニアスパラガス おつまみベーコン風味」をリリースして、味の幅を広げている。
吉村さんは「ただあくまで基本の味があってこその展開です」と言う。
「時代に合わせてフレーバーを変えていったり、商品を新しくしていったりする方法もあるかと思うのですが、弊社としては長年の顧客がいますから、味わい、品質、パッケージなどはあまり変えないという方針を大切にしてきました。
会社の目標として『親子3世代100年ブランド』と掲げているように、親から子、子から孫、またそこから次の世代に続いていくようなお菓子を作っているつもりです。もちろん、いろいろなフレーバーや関連グッズなどを出して、話題喚起に努めているところはあります。ただ、それよりも基本の味を大切にして、これまでのお客さまと長く続く関係を保っていきたいと思っています」