※本稿は、久坂部羊『寿命が尽きる2年前』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
厚労省が推進するがん検診は受けるべきか
現在、厚労省が推進しているがん検診は、肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの5種類です(男性は3種類)。
厚労省のHPには次のようにあります。
『国民の2人に1人が“がん”になり、3人に1人が“がん”で亡くなっています。しかし、皆様ががん検診を受けることで、がんによる死亡を今よりも減らすことができます。厚生労働省では、がん検診の受診率を50%以上とすることを目標に、がん検診を推進しています』(2022年「政策について」より)
実施母体は市町村で、ほとんどのところで費用の多くを公費で負担しています。根拠となる法律は、「健康増進法」(2003年施行)です。
余談ですが、この法律は、健康の維持増進を国民の義務と定めています。一方、憲法では、健康な生活は国民の権利としています。健康は義務なのか権利なのか、どっちやねんと法律の専門家に聞きたくなります。
「異常なし」に安心してはいけない
何事にもよい面と悪い面があるように、がん検診にもメリットとデメリットがあります。
メリットは、がんの早期発見で命が助かる人がいるということです。
デメリットは、がんではないのに、「疑い」を指摘され、不必要な検査で時間とお金と体力を無駄にさせられ、無用のストレスを受けることです。公費の無駄もあります。検査被曝による発がんの危険性もあります。
また、検診で異常なしという結果が出たため、安心してしまって、症状があるのに病院を受診せず、手遅れになる危険性もあります。
もちろん、検診での見落としもあり、逆に放っておいても命に関わらないがんを見つけて、手術せざるを得なくなる過剰診断の危険もあります。
また、細胞レベルでがんが発生していても、最低でも5mmくらいの大きさにならないと発見されないので、検診で見つからなかったからといって、がんがないとは言い切れないこともあります。