検診に否定的な人がいないワケ

上記の通り、メリットに1行、デメリットに8行を費やしても、がん検診に否定的になる人は少ないでしょう。なぜなら、メリットに「命が助かる」という決定的な一文があるからです。

がん検診で一人でも助かる人がいるのなら、行うべきだという意見です。しかし、検査被曝による発がんの危険を考えるなら、一人でも検査でがんになる人がいるなら、やめるべきだとも言えるのではないでしょうか。

前にも書きましたが、日本は検査被曝によるがん患者が、世界の中でダントツに多い(全がん患者の約3.2%。アメリカやイギリスの約3倍から5倍)というのは、医療界ではよく知られた事実です。

厚生労働省が勧めている5つのがん検診(厚生労働省ホームページより)

5種類に対する物足りなさ

がん検診も健康診断同様、心配を減らすために行うものですが、上の5種の検診だけ受けていれば安心なのでしょうか。がんはほかにもたくさんあります。

特に、5年生存率の低いすい臓がんや食道がん、胆のう・胆道がん、肝臓がん、卵巣がん、腎盂じんう尿管がん、甲状腺未分化がんなどは、調べなくてもいいのでしょうか。ほかにも、腎臓がん、膀胱がん、肛門がん、喉頭がんに咽頭がん、舌がん、前立腺がん、白血病に悪性リンパ腫、悪性黒色腫、多発性骨髄腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、子宮肉腫、網膜芽細胞腫、脳腫瘍に脊髄腫瘍、縦隔腫瘍などもあります。

それらをいっさい無視して、厚労省が推進する5種のがん検診は、なんだか調べやすいものだけ調べるつまみ食いのようにも思えます。つまみ食いでは、もちろんお腹を満たすこと(がんに対する安心)はできません。

厚労省や医師会などは、がん検診を行うことで、確実にがんによる死亡者数が減ると言いますが、死亡者を減らすことだけを目的とするなら、5種類だけでなくすべてのがんについて、検診をすれば確実に減るでしょう。

しかし、それはあまりに手間と経費がかかりすぎ、受診者の負担も大きくなります。つまりは費用対効果を考慮して、右の5種類(しつこいようですが男性は3種類)に決めたのでしょう。