※本稿は、片野秀樹『あなたを疲れから救う休養学』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。
睡眠は疲れをとるために不可欠
いうまでもありませんが、睡眠は疲れをとるために必要不可欠なものです。睡眠をとらないと最終的に人間の体は壊れてしまいます。おそらくほとんどの人が徹夜をするのはつらいと思います。ましてそれが2晩におよぶと、頭を使う仕事や複雑な作業ができなくなってきます。さらに3日ぐらい寝ずにいると、幻覚を見始めたり、まともな会話ができなくなったりといった症状があらわれます。脳が完全に疲労状態になり、意思決定能力や判断能力が極端に低下してしまいます。「不眠死」などという言葉もあるようです。
睡眠の大事な役割の1つは、なんといっても細胞の修復です。昼間の活動で傷ついた細胞の修復が、主に睡眠中におこなわれます。厳密にいえば昼間でも細胞の修復はされています。しかし昼間は体を動かすほうに酸素が優先的に使われるので、あまり細胞の修復には手がまわりません。その点、睡眠中は消費する酸素が少なくて済むので、細胞の修復に酸素を使うことができます。細胞の修復を助ける成長ホルモンも夜、寝ているときに分泌されるので、眠ると疲れがとれるのです。
睡眠にはいろいろな力がある
睡眠にはほかにも肥満の予防、生活習慣病の予防、感染の予防という役割があります。とてもマルチな力をもっているのです。
まず、肥満と生活習慣病の予防から説明しましょう。
睡眠が短いと、食欲を増進するグレリンというホルモンが活発に出る一方で、食欲を抑制するホルモンであるレプチンが低下するため、肥満につながります(図表1)。すると、次のように連鎖が起きていきます。
・食事を食べすぎると血糖値が上がる
・血糖値が上がると肥満気味になり、体を動かすのがおっくうになる
人にもよりますが、こうした状態でストレスがかかると、喫煙や飲酒に逃げてしまったりすることもあるでしょう。するとコレステロールが増え、血糖値が上がって脂質異常症になります。もちろん、タバコは高血圧のもとですし、肥満自体も高血圧の原因です。つまり、睡眠不足をきっかけに肥満、ひいては生活習慣病を引き起こす悪いループに入ってしまうおそれがあるのです。一度ループにはまると、抜け出すのは大変です。
逆に考えれば、生活のリズムを整えること自体が病気の予防になるといえます。このことは知っておいてほしいと思います。