年とともに「眠り足りなくなる」のはしかたがない

よく知られていることですが、睡眠は加齢とともに変化します(図表3)。

ベッドに入っている時間(就床時間といいます)や睡眠時間そのものは、年を取ってもあまり変わりありません。睡眠時間でいうと25歳で7時間程度、45歳で6時間半程度、65歳になっても6時間程度で、そう大きな差はありません。

ただ、若いころはいったん眠りにつくと朝まで一度も目が覚めないのが普通ですが、中高年になると、夜中に何度か目が覚めるようになるのです。図表3でも、中途覚醒が年とともにどんどん増えていっているのがわかると思います。

【図表3】睡眠の加齢変化
片野秀樹『あなたを疲れから救う休養学』(東洋経済新報社)より

高齢者には「眠れない」「睡眠が足りない」と訴える人が多いのですが、実際は、睡眠量はそれほど変わりません。おそらく、中途覚醒が多いので、睡眠が足りない感じがするのでしょう。

片野秀樹『あなたを疲れから救う休養学』(東洋経済新報社)
片野秀樹『あなたを疲れから救う休養学』(東洋経済新報社)

もしかしたら、昼間うとうとして足りない睡眠を補充してしまっているのかもしれません。

余談ですが、睡眠には多相性睡眠と単相性睡眠があります。多相性睡眠というのは、1日のうちで何度も寝たり起きたりを繰り返す、赤ちゃんのときの睡眠です。成長とともに、一度眠りについたら朝まで起きない単相性睡眠に変わります。

ただし大人でも多層性睡眠のほうが体にいいという説があります。サッカー選手のクリスティアーノ・ロナウドが90分の睡眠を1日に5回とる多相性睡眠を取り入れているのは有名ですね。

片野 秀樹(かたの・ひでき)
日本リカバリー協会代表理事、博士(医学)

東海大学大学院医学研究科、東海大学健康科学部研究員、東海大学医学部研究員、日本体育大学体育学部研究員、特定国立研究開発法人理化学研究所客員研究員を経て、現在は一般財団法人博慈会老人病研究所客員研究員、一般社団法人日本未病総合研究所未病公認講師(休養学)、株式会社ベネクス執行役員も務める。日本リカバリー協会では、休養に関する社会の不理解解消やリテラシー向上を目指して啓発活動に取り組んでいる。編著書に『休養学基礎 疲労を防ぐ! 健康指導に活かす』(共編著、メディカ出版)、著書に『あなたを疲れから救う休養学』(東洋経済新報社)。