誤った解釈が加わると悪感情が強化される

エモーション(情動・感情)とは何でしょう? 不正や欲求不満あるいは傷ついたことに対する怒り。危険を前にした恐怖。成功、一緒にいること、あるいは単に生きる楽しさによる喜び。人が亡くなった時や、失望、敗北による悲しみ。これらは生理的な、生物としての適応反応です。

扁桃体が、適切な反応を確認する大脳新皮質に情報を与える前に、身体が対応する準備のためのホルモンの大量放出を命令します。これが、科学者が「高速回路」と呼ぶものです。一次的感情(情動)と呼ぶ人もいます。

反対に、フィーリング(気持ち)をともなう感情や二次的感情反応は、「思考」から発生します。科学者はこれを「遅い回路」と言います。したがって、この二次的感情反応は「解釈」に基づいています。そして間違える可能性があります!

「私はそれが不公平だと思ったので(解釈)、怒った(感情)」。表明することで、怒りは有効であると認められ、強化されます。

本来感情を表すことは、それを解放することですが、解釈に基づく二次的感情反応を表すことはその感情を強化することになるのです。

感情の発散方法を教えよう

子どもが感情に囚われると、衝動を感じて居ても立っても居られなくなります。身体が緊張をはらむせいで、暴れたり、動き回ったり、走ったり、殴ったりします。「何かしたい」という身体の欲求を感じて動いているのです。

イザベル・フィリオザ『6~11歳 子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)
イザベル・フィリオザ『6~11歳 子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)

身体が動くことを切望している時、「おとなしくじっとしていなさい」と言うのは非現実的です。むしろ、走ったり、踊ったり、泳いだりして存分に身体を動かすと発散できます。

たっぷり動いたあとも、強い情動が残っていて、まだ全身を震わせたり、泣いたりして放出することが必要な場合もあります。そんな時は優しく受け止めてあげてください。子どもは解放されている最中で、苦しんでいるのではありません。

感情を放出できない時、子どもは緊張状態が続き、他の人に対してささいなことで爆発する可能性があります。余計な反応であるこのときの放出は、緊張を取り除くどころか、その感情を強化してしまいます。

たとえば妹を叩くことでは、学校でいじめられたことで溜まった緊張を発散することはできません。その子は自分のいじめの問題が解決されない限り、ちょっとした機会に妹を殴ることになるでしょう。親の役目は、時に子どものこうした激しい衝動的な反応の後ろに隠れていることがあるエモーション(感情)を受け入れてあげることです。

感じているものを言葉にして表現すること、どんな時に反応するか、何が原因かを突き止めること、身体をコントロールすること、直面している問題を解決することなどを子どもに教えましょう。

そうすることで、子どもの感情的知性を育てることができます。

【図表1】感情をコントロールするために必要なこと
出典=『6~11歳 子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)より
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