思春期の子どもには、どのように接すればいいのか。心理療法士のイザベル・フィリオザ氏は「この時期の子どもたちは、親がコントロールしようとすると反発する。親にできるのは、聞き役に徹して本人が問題解決できるようにサポートすることだけ。ただし、『よく考えること』だけは教える必要がある」という――。

※本稿は、イザベル・フィリオザ『12~17歳 子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

懐疑的な若い女性
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抑圧された感情が再び表面に現れる

子どもたちはすっかり変わってしまいました。すぐに怒って自分の部屋にこもってしまう。自由にさせてほしいと部屋のドアに鍵をかける。少しずつ自立してきているが、段取りができない……。すばらしい思慮分別を発揮して理屈をこねたかと思うと、数分後には全く思慮を欠いているところを見せます。

危険ときたら、セックス、アルコール、喫煙、バイクでのスピードの出しすぎ……キリがないので、この話はやめましょう! こうしたことすべてが私たち親を心配させてやまないのです。しかし、思春期の子どもたちは素直に親の言うことに耳を傾けてくれません。それどころか、親にやたらと攻撃的だったりします。それはなぜなのでしょうか。

前の記事でも紹介しましたが、思春期の脳は大工事中です。脳の発達にともなうニューロン再編成の際、過去の思い出が刻まれているニューロンのネットワークが再活性化します。思い出は完全には意識に到達しませんが、ティーンエージャーは過去の感情から大きな影響を受け、情動システムが興奮しやすくなって、より敏感になります。抑圧された感情が再び表面に現れるのです。

脳の前頭前野は未熟なので、フィルターの役割を果たせず、そのまま生の感情を表してしまいます。それは今現在、何か原因があるのではなく過去に何かあって我慢していた、あるいは忘れていた感情が今になって無意識に出てきたものなのです。

過去に体験したショック、大事な人の不幸、困窮、喪失感など忘れられていた傷が表面に浮かび上がってきます。まるで脳が過去を掃除しようとしたら、古い傷が現れて、手当てを求めているようなものです。

子どもの心の声
苦しい、私はひとりぼっち……。