落とし穴に落ちて、再び立ち上がる経験が必要
わが子を親の思い通りにコントロールしようとしても逆効果です。親は子どもにすべての落とし穴を避けさせてやりたいと思うものですが、子どもは自分で落とし穴に落ちて、再び立ち上がる経験をすることが必要なのです。
親が子どもをコントロールする力がないことを認めると、子どもは心を開いて、耳を傾け始めます。逆に親が子どもをコントロールしようとして、制限したり、禁止したりすると、やれやれという態度や影で笑い、あるいは反抗的な態度しか返ってきません。私たちが主導権を取ろうとする試みは、子どもにとって取るに足らないものなのです。
ティーンエージャーはそれをよくわかっているので、親の力を振りかざそうとしても意味がありません。だからと言って、勝負を投げて、ティーンエージャーにやりたい放題をさせるというのは論外です。わが子の健康と未来をいつも考えていることを伝えましょう。そして親の無力を理解し、子どもの自由を重視しつつ、愛情や気がかりや心配を伝えるのです。
心に響く「親の心配の伝え方」
その際、次のように会話の合間に呼吸をはさむと、その間に子どもは親が言ったことを頭の中で繰り返して、自分のこととして理解することができます。あまり早く話すと、子どもは一部しか記憶に留めることができないため注意が必要です。
(ひと呼吸)
「これは君の人生で、君の手の中にある」
(ひと呼吸)
「大切な君のことを心配している(例:タバコ)、なぜなら……(例:思春期の子どもの脳をどれだけ損なうか知っているから)」
(ひと呼吸)
ティーンエージャーは、何でもかんでも反対したり、いつも反抗したりしているわけでもありません。彼らは私たちに向かって呼びかけているのです。なぜなら、私たちは親であり、人生において彼らを支え、導く人として、信頼されているから。
彼らの振る舞いがいかに不快だったり攻撃的だったりしても、それは「反応(リアクション)」なのです。ですから必ず原因があります。行き当たりばったりでしているのでもなければ、誰かを傷つけようとして振る舞っているのでもありません。
「どうしたの?」と声をかけて、子どもの心の扉を開きましょう。そうすることで、私たちも無意識のうちに下してしまう勝手な判断にブレーキをかけて、よく考え、深呼吸し、状況の分析をすることができます。
思考力を高める親の声かけ
思春期の子どもに起こることすべてについて、親に責任があるわけではありませんが、「よく考えること」はしっかりと教えなければなりません。わが子の脳を鍛えるため、いろいろなことを一緒に話し、探求しましょう。月並みな話や偏見は避けて、仮説を立て、論証し、反証して、本当の議論をすることが大切です。
そのためには、オープン・クエスチョンで問いかけることが有効です。クローズド・クエスチョンは、イエスかノーで答える形式の質問ですが、オープン・クエスチョンは探求を促す質問です。
下記に、オープン・クエスチョンの例を挙げます。
どう思う?/どう思ったの?
どんなふうに感じる?/どう感じたの?
他の人はどうするかしら?/他の人はどんな反応だった?
何でそんなことをしたのかしら?/どうしてそう思ったのかな?
あなたは本当はどうしたいの?
何が一番心配?
何が一番悲しい?
この試練から/この困難から/この経験から何を学んだ?
映画を観ることで複雑な感情をよく知ることができます。「おもしろかった?」で満足せず、登場人物たちに感じた気持ちを共有してみましょう。また、スピーチ動画を配信しているTEDやTEDxを家族で見るのも一案です。スピーカーたちが政治、芸術、科学、音楽、自己啓発などさまざまなテーマを扱っているので、家族で話し合うためのバラエティーに富んだ話題を提供してくれます。