※本稿は、イザベル・フィリオザ『6~11歳 子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
脅しや体罰は子どもの脳にダメージを与える
子どもは消極的な態度だったり、反抗的だったり、乱暴だったり、あるいは親や親の忠告から距離を置いたりします。まるで親にケンカをふっかけているようにさえ見えませんか?
子どもの態度を受け入れがたいと感じて、言うことを聞かせるために、コントロールを強めたくなりますよね。
「すぐやめなさい!」「早く歯を磨きなさい!」。脅したり、罰したり、楽しみを取り上げたり、逆にごほうびを約束したり。私たち親は「教育的」と思われているあらゆる手段を動員します。
作戦が失敗すると、親の怒りは爆発します。「こんなにしているのに、また!」。親の声の調子には、自分の思い通りにならない子どもに対する恨みがこもります。
ある研究者たちは、こうした教育的と言われる態度について、理性的ではない、と指摘しています。また他の研究者は、最先端の脳の画像技術によって、親がいかに自分自身の過去につまずいているかを教えてくれます。
親が感情的に激しく反応すると、理想の親でいることは難しいし、十分な明晰さで物事を考えることができなくなるのです。
多くの親が自分の役割は子どもをコントロールすることだと信じ、愛はごほうびであり、罰は必要で正当なものであるという強い信念を持って疑いません。
一部の親にとっては、子どもの頬を平手打ちすることやお尻を叩くことは当然に教育の一環なのです。長い目で見て、そうした体罰が子どもに効果がないことがわかっていても、この信念は簡単にはくつがえりません。1つには、多くの人に何世紀にもわたって支持されてきたからですし、もう1つには、他の方法もあるんだと思いつくにはかなりの時間と平静さが必要だからです。
昔は脳のことがほとんどわかっていなかったため、私たちの祖先や親は恐怖による教育は無害であると信じていました。
ですが、今日では、脳が発達段階でストレスにさらされることは、ホルモンのレベルを乱し、脳の構造に変異をもたらすことが証明されています。
これには疑問の余地はありません。脳の画像、ニューロン(神経細胞)やストレスホルモン、知能、記憶に関する知識が、体罰による教育は直ちにやめるべきであると告げているのです。
感情への後遺症に加えて、体罰を加えられるだけでなく、怒鳴られたり脅されたりすることで、脳の白質が変化し、ある領域の未発達、扁桃体とストレス回路の過活動など、脳に影響が残ることが明らかになっています。
それに、他の過ごし方があるのなら、親子の対立に時間とエネルギーを使ってしまうのはもったいないですよね? 子どもに寄り添って、子どもと暮らすほどの喜びは他にはありませんから。