「他とは違います戦略」も両立する

世界初・業界初の商品を生み出す意義は、お客様に高付加価値を提供できるだけではありません。

同時に、他社商品との差別化を図ることができるのです。世界初・業界初の商品であれば、他社との比較のしようがないので、相見積もりをとられることは基本的にありません。

つまり、キーエンスは世界初・業界初の商品を作り出すことによって、「付加価値戦略」と「差別化戦略」を両立しているのです。

わかりやすく表現すると、付加価値戦略=「あなたの役に立ちます戦略」であり、差別化戦略=「他とは違います戦略」です。

この2つを両立させることを目指していきましょう。

実際にビジネスがうまくいっていない人(または会社)の多くは、この2つのうち、どちらか一つだけしか考えていません。

付加価値戦略だけの場合、つまり「この商品はあなたの役に立ちますよ」とだけお客様に伝えたらどうなるでしょうか?

お客様は、「ありがとう! 役に立つんだね。でも、他社も『うちの商品は役に立ちますよ』と言っているから、もう少し値引きしてもらえないかな?」と反応するでしょう。

また、差別化戦略だけの場合、つまり「この商品は、他社商品とは違います」とだけお客様に伝えたらどうなるでしょうか?

お客様は、「ありがとう、他とは違うんだね。でも、その違いは我々にとって役に立つわけではないから、他社の商品でもいいな」と反応されてしまうかもしれません。

キーエンス社員がお客様に必ず伝えること

大切なことは、「この商品はあなたの役に立ちます。そして、それはこの商品にしかできません!」と伝えられることです。そう伝えるとお客様は「これ、いくら?」と反応し、ここで初めて独自の価格がつくのです。

田尻望『付加価値のつくりかた 一番大切なのに誰も教えてくれなかった仕事の本質』(かんき出版)
田尻望『付加価値のつくりかた 一番大切なのに誰も教えてくれなかった仕事の本質』(かんき出版)

キーエンスの営業だけでなく、トップセールス、トップマーケターたちは、この付加価値戦略と差別化戦略の両立が重要だということを認識し、お客様に提案するときは、この点を必ず伝えてアプローチしています。

そうすることにより、「相見積もり」をとられにくくし、価格競争に巻き込まれることを抑制しているのです。

世界初・業界初の商品を作ることによって、付加価値戦略と差別化戦略の両方を展開している。それが構造=仕組みとして確立されていて、ずっと変わることなく継続し続けている。

それがキーエンスなのです。

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