特注品だけを作り続けるのには限界がある

個人の判断や解釈ではなく、市場原理・経済原則に基づいて考えよう、という非常にシンプルな考え方ですが、とても深い意味を持っています。

なぜなら、企業側の個人の判断や解釈は、常に市場とずれているからです。

だからこそ、市場=お客様の原理を知り続けなければならないのです。

「経済原則で考える」だけを重視し、ただ利益を上げたい、という発想だけでビジネス展開していると、市場を敵に回してしまうこともあります。

逆に、市場原理だけに沿って、お客様が求める特注品を作ったとします。

特注品はマーケットイン型の商品に近いと言えます。

しかし、膨大な時間とお金をかけて、その会社でしか使えない特注品を作っても他では売れない、つまり儲からないので経済原則には沿っていません。

特注品ばかりを作り続けて、ある程度の利益が出て会社の規模を大きくできたとしても、やはり限界があります。

そうではなく、市場原理、経済原則を両輪で考え、お客様を味方につけながら利益を出す。

人々のうわさやコミュニケーションのイメージ
写真=iStock.com/Andrii Yalanskyi
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企業にはこの方向を目指してほしいですし、実現できたならこんなに素晴らしいことはありません。

キーエンスでは、この市場原理と経済原則の両方をうまく合致させたやり方で商品を作っています。

彼らは特定企業のニーズに応える商品を作るのですが、その企業でしか使えない特注品を作るわけではありません。

その企業が困っていることを解決し、なおかつ他企業でも使える「標準品」を作るのです。

他のメーカーなら特注品レベルの商品になってしまうものを、キーエンスは標準品として作ってしまうのです。

「標準品」でコストダウンし、利益を上げる

なぜそんなことが可能なのか?

キーエンスの人たちは、どの競合他社よりも多くの事例を知っていて、多くの企業が困っていることを熟知しているからです。

そのため、「あれ? このお客様が困っていることは、他の会社でも困っていることだぞ」ということに気づき、お客様のニーズに応えつつ、標準化して展開できる商品を企画、開発できるのです。

この仕様・機能をまとめて、標準型の商品にすることが、キーエンスにおける潜在ニーズの実現です。

その結果、お客様が困っていることを解決でき、しかも特注品を作るほどのコストがかからず、たくさん売れて利益が上がる、という市場原理と経済原則の両方に合致した展開ができるのです。