若い頃に勉強しておかないと思うような人生を歩めない

大切なのは「自力」だと強調する安藤さんに、それでは今の日本人が安藤さんのように国際的に通用するには何が必要だと思われますか、と聞いてみた。

「まぁ、日本人に限ったことではないのですが、若い頃にいかに『勉強』できるかということかな。多少、無理してでも頑張らないと。受験のための勉強だけじゃない、“自由な精神”を鍛える、生きていくための『勉強』ですよ」

“自由な精神”とは具体的に何なのか――。

「自由な精神とは、自分の頭で考え、自分の意志で行動する、自立した個人の力。それが今の日本にはないんですよね。これは教育制度の問題。まず、いちばん自由であるべき子供の時に、きっちり子供をする。そして、それぞれの道に向かって、知識と経験を積んでいく勉強。そうして自由な精神という人間の『芯』を育んでいく中で、自分の考えをしっかり発言できる強さが生まれるんじゃないかな」

僕が「『芯』がないから強い人間になれない、ということでしょ……」と続いて聞いた質問にも、かぶせ気味に、

「そりゃそうですよ。人間の『芯』にあるべき自由な精神とは、要するに自分なりの価値観で物事に感動できる感性、自分のやり方で、人生を生き抜く力。それがないから、周囲の目ばっかり気にしてしまう。自分がどうしたいか、何をしたいか、周りに気を遣いすぎて、わからなくなってしまう。これでは、思うような人生は歩めませんよ」

日本人が目指すべきは自分の生き方を押し通す力を持つこと

僕の「自分の考えを通すと、日本では叩かれる風潮があるのかもしれま……」というこの質問にもかぶせながら、

「そこを通すのがいいんじゃないですか(笑)。そうやって鍛えられていく。そんな人間を育てるには、親がある程度の段階で、子供を放り出して自立心をトレーニングさせないと。福澤諭吉の言うところの、自立自存の精神ね。周囲は関係ない。自分の責任で歩くっていうこと」

安藤さんいわく、日本に比べると欧米の方が自立自存の精神があるという。

「今の日本には、それが足りてないというか、まったくない(笑)。協調性もたしかに大切だけれど、『世界』で戦おうと言うのであれば、それではやっていけないよね。今、日本人が目指すべきは、極端に言えば簡単に周囲に同調しない勇気、自分の考えを、自分の生き方を押し通す力なんじゃないかな」

マンハッタンの夜景
写真=iStock.com/Bim
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