ニューヨークの街にはなぜ「出る杭」が集まってくるのか
世界は「出る杭」だらけ。特にニューヨークは市民総「出る杭」集団。むしろ出ないと誰にも気づいてもらえない。
しかも周囲が全員「出る杭」であれば、そこからさらに出ないと埋もれてしまう。出る杭の中からもっと「飛び出る杭」になる必要すらある。
「ニューヨーク、マンハッタンは20世紀を代表する“芸術”だと思う。一流の美術館がたくさんあるというだけじゃない。クライスラー、エンパイア・ステートみたいなアールデコの摩天楼から、現代の高層ビルまで、新旧の建築が競い合うように共存し、その中央にはぽっかりとセントラルパークみたいな余白の空間があって……その中で、多種多様な人種がひしめき合い、それぞれの夢を追いかけている。街の存在そのものが、ひとつのアートになっているんですよ。その新旧、東西の混成のエネルギーに惹かれて、(世界中から)人が集まってくるんですよね」
人を感動させ、人を惹きつけるマンハッタン。その街に住むニューヨーカーたちは存在自体がアート。叩かれても叩かれても、出る杭という存在は、生き方がすでに芸術なのだ。
可能性は自分自身の中に見つけるものだと信じている
最後に、そのニューヨークで生活している日本人に向けたメッセージをもらった。
「やっぱり、最後まで諦めずに自分のやりたいことを成し遂げてほしい。周囲の顔色を窺ってるだけじゃ何も成し遂げられない。せっかく世界が開かれた時代に、誰にでもチャンスがある時代に生きているわけだから。自分の心に正直に、いくつになっても挑戦する勇気を持って人生を走り続けること。
私は大学にも行けず、師匠も持たないというハンディキャップを抱えたまま社会に出てきました。可能性は、自分自身の中に見つけるものと信じてやってきました。そんな図太さというか、明るさのおかげで、今がある(笑)。自分の人生を決めるのは、他人じゃない。自立した個人としての自分しかいないんです」
プロボクサーを経験し、世界中を旅し、独学で世界の建築家になった男がいちばん大切にしていることは、「出る杭」を通り越した「飛び抜けた杭」になること。限られた人生の時間、空気を読んでいる時間なんてあまりにもったいない。