「カゼ薬を出しておきましょう」と言う医師はかなり怪しい

原因の多くはウイルスである。そしてその原因ウイルスの種類も数多く存在する。熱は出ないか発熱しても3日以内に解熱することがほとんどで、38度を超える高熱が持続することは極めてまれだ。食事がとれなくなったり、重症化して命を落とすことはまずなく、何か薬を飲まなくとも1週間程度で自然治癒する。

よく「カゼをこじらせて肺炎になった」という話を聞くが、これはカゼの原因となったウイルスが肺炎を起こすのではなく、カゼを引いて体調が落ちたところに、二次的に感染した細菌等によって引き起こされるものがほとんど。むしろ重症化しないことこそが、「カゼ」の特徴であるといっても良いくらいだ。

昔なら、カゼを引いたと思って診療所に行くと、医師から「カゼの引き始めですね、カゼ薬と抗生物質を出しておきましょう」などとよく言われたものだが、現在の医療現場でこのような説明をする医師がもしもいるならば、その医師はかなり怪しい。カゼの原因であるウイルスに抗菌薬が効かないことは言うまでもないが、そもそも“カゼ薬”というものは存在しないからだ。

市販の“カゼ薬”を早めに飲んでも治る効果はない

冬になると、テレビでは“カゼ薬”のCMがよく流れてくる。例えば「効いたよね、早めのパ◯ロン」といったようなもの。この薬を早めに飲めば効いて、大事に至ることなく済むと思い込まされてしまうキャッチコピーだが、このCMは、私に言わせれば医薬品等の誇大広告を禁ずる薬事法第66条に明確に違反している。

なぜなら、これら街で売られている「総合感冒薬」と言われるものに含まれている成分は、カゼの諸症状を若干緩和する可能性が期待されるものの、早めに飲むことでその後の経過、すなわち予後を変える効果など一切持たないからだ。このようなCMが野放しにされているのは、誠に由々しき状況だが、消費者もこのような商品に効果を期待して安易に飛びつくことなく十分に注意する必要がある。

さらにこれらの「総合感冒薬」には、解熱剤から鎮咳薬、アレルギー症状を抑える抗ヒスタミン薬まで多くの成分が含まれているため要注意だ。実際、コロナの発熱外来を受診した患者さんに内服していた市販薬を見せてもらったところ、咳など一切出ていない方だったにもかかわらず、その薬は強力な鎮咳薬を含有しているものであった。CMや効きそうな力強いパッケージにだまされてしまった被害者ともいえるだろう。