「僕はなにがやりたいかというと、本質を極めたいんですよ。土づくりってなんなんだろうというのと同じ感覚で、バウムクーヘンの本質はなにかと気になる。だから、ドイツにあるバウムクーヘン発祥のお店『クロイツカム』にも行きました。なにごとも小手先でやっていると、土台が崩れる気がするんですよね」

ちなみに、ここに挙げた5つの大会で受賞している菓子メーカーは大小含めて日本になく、深作さんは農家の6代目でありながら、「日本一のバウムクーヘン職人」としてテレビ番組に取り上げられたこともある。

また、6900円もするメロンバウムプレミアムは受賞後に何度もテレビに取り上げられ、そのたびに注文が殺到して3、4カ月待ちになる。投資対効果でいえば、初期投資の何倍にもなってかえってきていると言えるだろう。

提供=深作農園
全国菓子大博覧会で最高賞の名誉総裁賞に輝いた「メロンバウムプレミアム」。時には4か月待ちになる。

世界中を探しても見つからないものを作る

「なにごとも小手先でやらない」というのは、深作さんの基本的な姿勢だ。

2015年には、直売所のお客さんに「食べられるところはないの?」と聞かれたのがきっかけで、洋菓子販売とカフェを併設した「LE FUKASAKU(ル・フカサク)」を建てた。

このカフェは、農林水産省の六次産業化法の認定を受けており、自社の作物をより積極的に活用しようという意図がある。

「イチゴとメロンは洋菓子とも相性がいいはずだし、口に入れるところまでプロデュースするほうが面白いと思ったんです。始める前に全国の和菓子店、洋菓子店を訪ね歩きました。そこで気に入ったものをマネするんじゃなくて、うちだったならなにができるか、うちにしかできないことはなにかなと考えます」

筆者撮影
シールを張ってもらうことで、お客さんがどこから来たのかを把握する取り組み。

取材の日、注文したスペシャルメロンパフェが届くと、濃厚なメロンの香りが漂ってきた。スプーンをメロンに差し込むと、スッと抵抗なく入っていく。これが完熟の香りと柔らかさ! それを口に含むと、トロトロな果肉がスッと溶けた後、甘みが爆発的に拡がった。

こ、こ、これはメロンのビックバン!? それから僕は、無心になってメロンとソフトクリームにかぶりついた。

その日のカフェの店頭では、1日100個限定の特製メロンパンが、完売。

このメロンパンは、完熟メロンピューレを贅沢に使用した生地に濃厚なメロンクリームをはさんだもので、深作さんは「世界中探しても、ここまでメロンを使っているメロンパンはほかにないと思うんですよね」とほほ笑む。

「本質を極めるということは、まず徹底的にやってみるということです。もうひとつは、自分が食べておいしいと思うものを作ること。最初の1年、カフェの売り上げはバウムクーヘンよりも少なかったんですけど、あっという間に抜きました。今も毎年売り上げが伸びています」

筆者撮影
自家製のイチゴ、メロンなどを使った菓子は茨城お土産大賞を受賞した。

6次産業化で成功した理由

深作さんが次に仕掛けるのは、ジェラート。取材に行った際には、直売所の隣にジェラート工房を作っているところだった。

いかにもジェラート向きなメロン、イチゴ、トマト、さつまいもなどを作っていて、「やらない理由がない」という。このジェラート工房にも妥協はない。