「イタリアには5社ぐらいジェラートメーカーがあるんですが、イタリアで一番売れていて、ジェラート業界のフェラーリと呼ばれているカルピジャーニというメーカーがあるんです。展示会で他社の製品と比較したうえで、世界ナンバーワンと言われているマシンの導入を決めました」
日本では、生産者が自ら加工、販売を手掛ける6次産業化を推している。しかし、実際のところ成功例があまりないと言われている。
それはなぜかという理由、そしてどうやったら成功できるかを考える時、投資を惜しまずしっかりと「土台」を作ること、小手先でやらないこと、「自分たちにしかできないことはなにか」を考えること、「やると決めたら徹底的にやる」という深作さんの姿勢はひとつの指針になると思う。
「農業が面白いところは、絶対に嘘がないこと」
バウムクーヘン、洋菓子、ジェラートと加工品が増え、いわゆる「農家」の枠組みを超えて、独自の路線を歩む深作農園だが、深作さんのベースはあくまでも農業にある。
「農業が面白いところは、絶対に嘘がないこと。手をかけた分、返ってくる業界なんですよ。もちろん、台風とかの災害で自然は残酷だなと感じることもあるんですけど、それも含めて、嘘がない世界で仕事をするのはいいですよ。これ、就職活動する学生に響きそうですよね(笑)」
深作農園はリクナビに求人を出していて、リクルートの担当者が驚くほどの応募があるという。そのなかには東京大学を含め、誰もが名を知るような有名大学の学生も多い。しかし、採用するのは100人にひとり程度。学歴で判断するつもりはないという。
正社員、アルバイトを含め、50名弱のスタッフのうち6割が女性。アルバイトは16歳から75歳まで幅広い。評価するのは、あくまでなにができるのかという能力だ。
「やる気と能力さえあれば、年齢も性別も国籍も学歴も関係ありません。うちは外国籍の方も働いています。女性が多いのも、理由があるんですよ。男はどちらかというと縦社会なんですが、女性は横社会で、人をまとめるのがうまいんですよ。あと、察知するのが得意でしょう。うちのような農業においては、なにかが変だ、なにかが変わった、雰囲気が違うと気づくことが大切なんです。だから、うちは女性が多いし、責任者も女性ばかりです。自然と多様性のあるメンバーになりました」