22年4月、黒字化の道筋をつけて経営体制を刷新
22年4月1日、ANAHDは経営体制を刷新した。
7年間にわたって社長を務めた片野坂真哉は会長となり、代表取締役専務執行役員だった芝田浩二が後任の社長に就いた。中核事業会社のANAの社長を5年間務めた平子裕志はANAHD副会長に転じ、ANAの代表取締役専務執行役員や非航空事業の中核に位置付けられるANA Xの社長を務めた井上慎一がANA社長に就任した。
「最強の布陣をつくったということだ」。一連の人事を発表した2月10日、片野坂は報道陣にこう胸を張った。
これまでANAHDやANAの社長は4年での交代が慣例だった。ただ「4年は短い」との議論が人事諮問委員会などで巻き起こり、片野坂は5年目も続投した。念頭にあったのは20年3月の羽田空港国際線発着枠の拡大、そして20年夏に開催予定だった東京五輪・パラリンピックだ。国も20年に訪日外国人を4000万人まで増やす目標を掲げる中、ANAHDは国際線を中心とした拡大戦略にまい進してきた。節目を見届けて21年春に社長を交代するのが既定路線だった。平子も21年春を社長交代時期として見据えていた。
そんな中でコロナ禍がやってきた。好調な約10年間から一転、激震に見舞われたANAHDは立て直しに向けた事業構造改革を最優先しなければならなかった。経営陣の刷新時期は後ろにずれた。それでも、21年10~12月期に営業損益ベースで黒字転換したように、「ウィズコロナ」「アフターコロナ」に向けた反転攻勢への道筋は一定程度ついた。「コロナ禍は終わっていないが、23年3月期の黒字化は十分果たせる。走りながらバトンを渡せるタイミングだった」(片野坂)
社員に10万円の特別給支給と賃金カット終了を検討
22年4月末、芝田がANAHD社長として初めて臨んだ決算会見。芝田は22年3月期通期が1436億円の最終赤字だったと発表した。
21年10月の時点で22年3月期の最終損益見通しを1000億円の赤字としていたが、その赤字幅が拡大する形で、ANAHDが絶対に避けなければならないと考えてきた2期連続の赤字が確定した。
それでも、ANAHDは何とか「自力」で肉体改造を進めた。外部への出向を推進したり、余分にかかる費用を少しでも削減しようと工夫したり……。社員の惜しみない協力が危機を乗り越える原動力となった。先立つ1月には、社員の奮闘に報いるため、社員に10万円の特別金を支給するほか、賃金カットの終了を検討し始めていた。