面接会場には記者とカメラを配置して…

――400人くらい応募があったそうですね。

【村井】職務経験が3年以上ある人、というのが条件で、関心を示してくれた人が400人、選考にエントリーしてきた人が250人くらいですかね。これを四十数名に絞り込まなくてはならない。自分自身がメディアにさらされ、頭が真っ白になる経験を数多くしていたので「ここは、頭真っ白作戦でいこう!」と思い立ち、ものすごく工夫した選考会にしました。

――頭真っ白作戦?

【村井】応募者が面接会場に入ると、いつも記者会見の時、用意されているバックボードがあって、職員やバイト君たちが扮する記者が待ち構えていて、その後ろではカメラが備え付けてある。そこで「どうぞ自己紹介をしてください」と。

――なぜそんなことを?

【村井】頭が真っ白になりますよね。応接室での問答を想定して、しっかり考え鎧を着た状態では通用しません。無防備で人間の素が出てしまう状況です。2回目はホワイトボードを置いて、お題を出しました。「あなたがJクラブの社長だったらどんなコンセプトでどんなクラブを作りたいですか。8分考えて、4分でコンセプトピクチャーを書いて説明してください」と。私がいつも迫られている日常の再現です。

2014年にチェアマンに就任し4期8年務めた村井満さん
撮影=奥谷仁

1.競技の向上、2.財務強化、3.社会貢献

【村井】われわれが見たいのは発表の中身の完成度なんかじゃなくて、仕草の中に見えるその人の本質や本性。いわゆる人間性の部分です。最後は私が1対1で突っ込んだ面接をする。いわゆるデプスインタビューですね。全員が3回の面接をこなしていくのです。

――面接を経て選ばれた四十数名は、どんなことを学んだのですか。

【村井】1年次は主に立命館大学で「ビジネス全般」「スポーツビジネス概論」、Jクラブの社長やGM(ゼネラル・マネージャー)、強化育成部長から「Jリーグ・Jクラブの経営の実践論」について学びます。私自身も3時間のロング講義を担当しました。Jリーグには51のクラブがあり、経営の臨床例が数多くあるわけですから、そこから学ぶことはたくさんあります。

大きく分けると講義の中身は、サッカーチームとしての競技水準の向上や普及・育成、クラブとしての関心度を高め集客や視聴者の獲得を通じた財務面の強化、Jリーグの理念である「豊かなスポーツ文化」を振興することで社会に貢献することの3つがあるわけです。これからJリーグやクラブの経営に関わろうとする人たちが「何のためにJリーグは存在するのか」を考え続けるセッションかもしれません。