トヨタの書類は読むのではなく「眺める」
トヨタの書類には見方があります。
受け取った側はまず全体を眺めます。それから何が起こっているのか、また、企画書であれば何がしたいのか、①番の現状把握を見る。
その次にここが肝心と思った箇所を読む。たいてい、③番の要因解析です。どうやって追及して、真因を見つけたか。企画書であればどうしてこうした企画を考えるに至ったか、思考の経過ですね。そこが間違っていたら、対策の立案、企画の内容も信用できないわけです。
トヨタの書類でいちばん大切な部分とは結論ではなく、「考えの経路」つまり、なぜなぜ解析をやった部分なんです。
この考え方はトヨタ生産方式にも通じてきます。トヨタの仕事が問題解決と言ったのは、問題を解決していけば仕事がスムーズに流れていく。結果として生産性の向上につながるからです。
例えば、今、半導体が不足しています。処置とすればあるところから買ってきて、生産現場へ送ればいいでしょう。その間の物流をカイゼンして輸送のリードタイムを短縮すればなおいい。しかし、これはまだ処置の段階です。
真因は半導体の生産が少ないことですから、トヨタの生産調査部が半導体メーカーへ出かけていって、生産が増えるよう応援指導をしたりするのです。真因は上流にあるわけですから、そこまでさかのぼって半導体を増やすことが対策です。半導体の生産量を恒常的に増やせば不足しなくなるわけで、再発防止になりますよね。
「先に結論を書け」では本質を理解できない
トヨタの人間が書類を作成する時、企画書であれ、報告書であれ、どういったものでもこの形式になります。
受け取った側は結論だけを最初に読まされても判断がつきません。提案された企画をやっていいのかいけないのかを判断するには企画した人間の思考過程がわからないといけないのです。ですから、トヨタの書類は結論(対策の立案)よりも、なぜなぜ解析の部分が重要になるのです。
なぜだ、なぜだ、と問い詰めていくのはまるで刑事が重大事件の捜査をするみたいです。そして、問い詰めていく間に対策がぽっと浮かんでくるのです。
ヒューズが飛んだからと、交換してそれでおしまいにしてしまったら何度も飛びます。不具合、仕事が進捗しないことに対しては処置をして、それでおしまいではいけないのです。ちゃんと対策を立案していかなければなりません。
なお、かつては社員の大半がA3書類の書き方を教わりました。今ではツールが変わってきていますから、プレゼンで使うようなパワーポイントになり、画面も1画面ではありません。ただし、4つの要素は必ず入っています。そして、ビジュアルでイラスト素材を入れたり、写真、動画も入れたりしています。ひと目見てわかりやすいものになってきています。しかし、パワーポイントにする前に紙一枚にまとめてみる社員は多いと思います。