人事評価「トップ5%」の社員は、20代をどのように過ごしたのか。延べ2万人の言動データを5年にわたり収集・分析したクロスリバー代表の越川慎司さんは「トップ5%人材に共通する要素として、20代から“偶然を引き寄せる”ことが習慣化されている点が挙げられる」という──。(第2回/全5回)
モチベーションを低下させる人事部の施策
「将来やりたいことなんてありません」
「キャリアディスカッション」と称される、上司と部下の話し合いを定期的に行っている企業は多いことでしょう。部下のキャリア開発を支援したいと思う上司、そして離職率改善を目指す人事部が、そうした社員の意向を聞く場を設定しているのです。
しかし、儀式的なキャリアディスカッションはむしろ、メンバーのモチベーションを下げるだけだと言ったら驚かれるでしょうか。
この変化の激しい時代に、3年後、5年後の自分を想像するのは、決して容易なことではありません。自分の明確な目標を持たないメンバーもいるでしょう。中には目の前の仕事をこなすだけで精いっぱいで、長期的な視点を持てないメンバーもいます。
5%社員は「内省」し、未来を見据える
5%社員は、20代・30代の時に行ったキャリアディスカッションについて、「自分にできること」を内省する場と位置付けていました。「何をしたいか」の前に、「何ができるようになったか」を振り返って自己評価していたのです。
もっとはっきり言えば、過去の自分と現状を振り返って、「良かった点」と「悪かった点」を内省しながら次に未来のことについて考えていたそうです。
「将来目指したいキャリア像や、希望する仕事内容、なりたい役職を20代で明確にしなくてもいいのではないか」と総合商社の5%社員が発言していました。
確かに、私自身の経験を振り返っても、20代のうちに、あるいは3年前や5年前でさえ、現在の自分の姿が想像できていたかというと、そんなことはありませんでした。