航空機テロはGEに大打撃を与えかねない

私はアンディ・ラックに電話した。GEの傘下にある放送局NBCのナンバー2だ。彼のボスであるボブ・ライトが移動中だったため、私はラックを現地ニューヨークの情報源に指名した。ラックはNBCのニュース部門から、2機の旅客機がツインタワーに衝突しただけでなく、別の1機がペンタゴンに墜落し、4機目がペンシルベニアの平地に墜落した情報を得ていた。これは一連のハイジャック事件――テロ行為だったのだ。

飛行機墜落、火災と煙の上の飛行機。空の旅の概念の恐怖
写真=iStock.com/Sergey Tinyakov
※写真はイメージです

アメリカ全土に衝撃が走った。また、GEの航空部門にも直接影響する出来事でもあった。歴史上初めて、飛行機そのものが武器として利用された。そしてGEは飛行機を1200機も所有している。ジェットエンジン事業こそが、GEの未来なのである。

ニュースキャスターが、予想される犠牲者数をレポートしはじめたころ、私はロサンゼルスにいるライト(NBCのCEO)と連絡がついた。私たち二人は追って通知があるまで、コマーシャルなしで放送を続けることに決めた。何百万ドルもの損害になるが、そんなことにかまっていられない。およそ3000人が命を落とし、6000人以上が負傷し、国家が戦争の危機に瀕していたのである。テロ攻撃ほぼ一色に染まった報道の合間に宣伝を行うことが、正しいことだとは思えなかった。

ニューヨーク市長に匿名での寄付を申し出るが…

まもなく、悲劇のほぼすべての部分に、GEが何らかの形で関わっていることが明らかになってきた。GEのエンジンを積んだ飛行機が、GEの保険に加入している不動産を破壊した。そのニュースを伝えるNBCは、GEが所有するテレビ局だ。2人のGE社員――ツインタワーの一棟の最上階で働いていたNBC技術者と、墜落した飛行機に乗っていた航空部門に属する女性社員――が命を落とした。

タワーは火曜日に崩壊した。水曜日、アンディ・ラックと私は話し合い、GEは消防士をはじめとした救助関係者の家族に1000万ドルを寄付すべきだと結論した。私はニューヨーク市長のルドルフ・ジュリアーニの電話番号を知っていたので、電話をかけてみた。アシスタントが応対するのだろうと思っていたのだが、2回ベルが鳴っただけで、ジュリアーニ本人が電話に出た。私は、“匿名で”寄付をしたいと伝えた。その申し出をジュリアーニは断固として拒んだ。

「馬鹿を言うな、ジェフ!」と、彼は言った。「GEの寄付を使ってほかの会社に恥をかかせて、寄付をするように仕向けてやる!」。その1~2時間後にジュリアーニは基金を設立し、GEからの寄付を公表した。彼はGEの寄付を呼び水にして、何億ドルもの寄付を集めたのである。

それ自体は喜ばしいことだが、だからといってテロの恐怖を消し去ることはできない。CEOとしての最初の1週間が終わるころ、GEの株は価値を20パーセント失い、会社の時価総額は800億ドル減少した。