※本稿は、ジェフ・イメルト『GEのリーダーシップ』(光文社)の一部を再編集したものです。
凄惨な様子がテレビで映し出された9.11
9月11日火曜日の朝5時に目が覚めた私は、主要顧客であるボーイング社を訪問する前にジムへ行くことにした。踏み台昇降マシン(ステアクライマー)の上にあったテレビをつけると、どのチャンネルも110階建てのワールドトレードセンターのノースタワーが燃える様子を映し出していた。
私が聞いた最初のレポートは、小型の飛行機が誤ってコースを外れたのだろうと推測していた。しかし、ステアクライマーを右、左、右、左と昇り降りする私の目の前で、別の飛行機がサウスタワーに激突した。小型とはとても言えない大きさの飛行機が。ランケン空港で飛行機の話をしてくれた父のおかげで、私にはそれがボーイング767型機だとすぐにわかった。今まさに何か恐ろしいことが起こっていることは間違いなかった。
私は急いでジムを出て部屋に戻った。妻のアンディと14歳の娘のサラはコネチカット州ニューカナーンにいる。最近、ミルウォーキーからそこへ引っ越したばかりだ。家族の安全を確かめたあと、私はテレビをつけてから、最初にGEの最高財務責任者(CFO)であるキース・シェリンに電話をした。彼もちょうどニュースを見ていたところだったが、私たちは想像を絶する映像を脳が処理するまで、あまり多くを話すことができなかった。
飛行機が激突した場所より上の階にいた人たちは避難できたのだろうか。できたとしたら、どうやって。そんなことを話した。
その一方で、ツインタワーのすぐそばにあり、ワールドトレードセンターの一画を構成する47階建ての7ワールドトレードセンターのすべての再保険をGEが保有している事実を、2人とも知っていた。保険証券を有している保険会社に、私たちが保険をかけたのだ。シアトル時間の午前6時59分、サウスタワーが崩れ落ちた。自分の目が信じられなかった。29分後、ノースタワーも崩れ、7ワールドトレードセンターもまもなく倒壊した。ツインタワーは強大な力に押しつぶされたのだ。煤と不気味な白い灰が、ロウアー・マンハッタンを飲み込んだ。