コロナ禍が示した、医療界の年功序列と老人支配

コロナ禍が若手医師に示した現実の一つは、医療界に今なお残る年功序列と老人支配、そしてデジタル化の遅れであろう。「コロナ専門家会議」「日本医師会」「東京都医師会」などで実権を握り、記者会見に登場する医師のほとんどが60~70代高齢医師である。

2022年10月には厚労省の「地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ」が開催されて2024年度の大学医学部定員(募集人員)が決定された。かねてより「医師過剰が見込まれるので2022年度以降は減員」と定められていたものを覆し、「2022年度はコロナの影響で十分に議論できなかったので現状維持」を決定した。しかし、この決定に首を傾げる医療関係者は多い。

ネット会議システムの発達した令和時代において1年の時間がありながら、「コロナで議論できなかったから」という言い訳によって政策決定されるアナログ感にはあきれてしまう。

古めかしい病院の病室
写真=iStock.com/fotocelia
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地方医師不足には解雇規制緩和、そして雇用の流動化を

2022年10月、起業家のイーロン・マスク氏がTwitter社を買収し、自らCEOに就任して話題になっている。11月5日には「同社日本法人でも半数を解雇」と報じられた。「社員の半数が解雇なんて、Twitterはあっという間に機能不全に陥るのでは」という心配をよそに、現在も大きな問題も起きていない。結局、「不要人員のリストラ」という経営者判断として正しかったことを証明している、との指摘もある。

筆者が言いたいのは、日本の医療界で最も医師が余っているのは、大学病院や公立病院の窓際だということだ。医療界に年功序列が色濃く残る以上、年を重ねるほど組織にしがみ付くことが(本人にとっては)合理的な選択肢となり、デジタル化や合理化の足かせとなり、中堅層が疲れ果てて辞めてしまう。

また、年功序列制度が機能するためには、組織への安定的な新人供給が必須である。だが現在、その仕組みを満たし、維持できるのは「都市部のマイナー科医局」に限られており、そうした医局を目指す若手医師だけが増えている。

上記で説明した新研修医/専門医制度が機能しないのは、言ってしまえば「医師偏在」が原因だ。全世代の医師で取り組むべきこの課題を、「老人が会議で決定し、若手医師にのみ義務を負わせる」という日本の縮図のような世代間格差を拡大させるような政策ばかり推進していることがすべての元凶なのだ。

永久ライセンスである医師免許所持者ならば、突然解雇されてもインターネットで「予防接種日給8万円」のようなアルバイトも探すことが可能であり、路頭に迷うことはそうそうない。

そこで、筆者は提言したい。解雇規制緩和によってTwitter社のような大胆なリストラを可能にし、窓際の余剰医師を労働市場に戻すべきである。全世代にとってフェアな競争環境の整備こそが、大学病院の健全化や地方への医師供給を可能にするのではないだろうか。

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