今日うまくいったからといって明日の保証はない

立派な経営を持続していくとすれば、立派な考え方を持続して持っていなければならないのです。5年、10年、一時的な成功で繁栄するのは簡単なことかもしれませんが、中小企業を経営し、長い間従業員を守り、長い間事業を続けていくのはたいへん難しいことだと思います。

また脱線します。経営の苦しさ、持続しなければならない苦しさ、今日うまくいったからといって明日の保証はない。だから今日をがんばり、明日もがんばり、エンドレスに際限もなく努力を続けなければならない。最初の頃、そのことを思うと気が遠くなるくらいの恐ろしい感じがしたものです。そのときに、「オリンピックの選手やったら、まだええがな」と思ったことがあります。オリンピック選手になることはたいへんなことですし、みんなから賞賛もされ、本人も立派なことだと思っているかもしれません。もちろん、そのためには素質も努力も要りましょう。オリンピックに備えて10年間努力をしなければならないかもしれません。

しかし、4年に1度まわってくるオリンピック、それだけに焦点を合わせて努力をするなら、まだ簡単なことだと思うのです。我々は10年はおろか、20年も30年も40年も繁栄し続けなければなりません。そしてその努力をずっと続けなければなりません。その間に慢心してもいけませんし、傲慢になってもいけない。中小零細の頃には謙虚で倹約を旨とし、質素に懸命にがんばってきた。その後、いくらお金持ちになろうとも、いくら会社が立派になろうとも、それを持続しなければならない。よほど克己心が強くなければ、持続できるわけがないのです。

「そういう我々中小企業経営者に比べれば、オリンピック選手になるくらい、そんなもん簡単なことや。5年や10年、死ぬ思いで努力しても、その後は遊んでもいいのだったら、そんな楽なことはないわい」。昔、自分がつらかったものだから、経営者として生きていくことがつらかったものだから、当たり散らして、オリンピック選手にまで「あんなもん簡単なこっちゃ」と思っていたわけです。つまり、経営者は守り続けていかなければならない。変わってはならないのです。

またまた脱線します。人生の方程式の中にある「考え方」とは、哲学であり、思想なのですけれども、もうひとつ言葉をかえれば、人格、人間性です。この人格、人間性が人生の結果、仕事の結果を決めるわけです。よく私は、カニは自分の甲羅に似せて穴を掘ると言うように、企業はトップの器の分しか大きくならないのですよと言っていますね。そのトップの器、大きさ、器量が、人格なのです。その人が持つ人間性です。その人が持つ人格、人間性によって企業の規模も全部決まっていく。そのために、私ども盛和塾という場で自分をつくっていこうとしているわけです。

また、この盛和塾を始めましたときには、「心を高め、経営を伸ばそう。心を磨くこと、心を高めることと経営を伸ばすことはイコールなのですよ」と言いました。つまり、人格、人間性、品格、そういうものが人生を決めていくわけです。