そういう話をしたのですが、みなさん、「そこまで考えれば、リーダーのあるべき姿にはまだまだ難しい問題があるのですね」という話をしておられました。たいへん脱線をしましたが、倹約を旨とするということは、中小零細のときにだけ必要なものではなくて、どんなに立派でよい企業になっても、変わらずにこれを旨としていかなければならないのです。みなさんもぜひ、倹約を旨とし続けてください。

「まとめて安く買う」にはロスがいっぱいある

物品や原材料を購入する場合、大量に買えば単価が下がるからといって、安易に必要以上のものを買うべきではありません。余分に買うことは無駄遣いのもとになります。たとえ一時的に大量に安く購入できたとしても、これによって在庫を保管するための倉庫が必要となったり、在庫金利が発生したりといった余分な経費がかかってきますし、さらには製品の仕様変更などの理由で、まったく使えなくなってしまう危険性もあります。やはりメーカーはメーカーに徹し、ものづくりそのもので利益をあげるということに専念すべきです。必要なときに必要なだけ購入するという考え方が大切です。

このことは一見、経済原理に反するように見えます。たしかに近代資本主義では、大量にモノをつくって大量に販売していく関係もあって、まとめて買えばよいものが安く買えることは常識になっています。そのために、量をまとめて安く買うことがものを買うコツだと言われていますが、その経済合理性に反するようなことを、私は今でも社内でやらせています。つまり、必要なときに必要な量だけを購入する、たとえ若干高くても、必要な量しか買わないということを厳格に守らせています。

たしかに若干高い買い物かもしれませんが、在庫を持って運営すれば、そのための倉庫が要りますし、在庫金利もかかります。また、決算ごとに棚卸しをしなければなりませんし、使わなくなったものがあれば廃棄処分にしなければなりません。つまり、安く買ったように見えるけれども、そういう目に見えないロスがいっぱい出てくるわけです。

非合理的な話のように思うかもしれませんが、必要なものを必要な分だけ買うものですから、その使い方には細心の注意が払われ、無駄遣いをしないということにもつながっていくわけです。在庫がたくさんあれば、ちょっとくらい失敗しても在庫から引っぱり出してつくることができますが、在庫がない、要る分だけしか買っていないとすれば、失敗が許されなくなりますし、ものの使い方も丁寧になっていくという心理的なメリットにもつながっていきます。

京セラでは、これを「当座買い」と言っています。まとめて買えば安くなるのだから、まとめて買ったほうが得ですという単純な経済法則だけではなくて、当座買いをすれば高く買ったように見えるけれども、在庫金利は発生しないし、倉庫をつくる必要もありません。また、在庫品が不良廃棄処分になることもなければ、材料が少ないために、かえって丁寧に使うということにもなっていきます。つまり、若干高くついたとしても、それを補って余りあるメリットがいろいろとあるわけです。

(図版作成=大橋昭一)
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