学習院の校庭でプリンセスに「アイーン」
その昔、眞子さま・佳子さま姉妹が学習院初等科へお進みになったとのニュースは、当の学び舎に集う初等科キッズたちにも大きな出来事だったのだという。
「学習院にプリンセスが来る」
天皇陛下の直系の初孫にあたる眞子さま、そして佳子さまをお預かりする教員たちはビシバシに緊張、お迎えにあたって失礼や不手際があっては絶対にならぬとさまざまな学内プロトコルとロジスティクスが検討され、何度もリハーサルが重ねられ、保護者にも決して過剰ではないが大いなる威厳と高い品格でもって「空気を読んでね。すごく」「あと、ちゃんとお子さんにも言い聞かせておいてね。すごく」との丁寧な通達があった、に違いない。
既に初等科にいらっしゃる眞子さまに加え、今度は佳子さまが入学されるというその春、初等科2年生に進級したある少年は、学内の大人も子どももみんな浮き立つ空気をビンビンに感じ、高揚を隠せなかった。「上級生として、佳子さまにいろいろ教えて差し上げなきゃ!」。なにせ僕はお兄さんなんだから、1年生が知らないことをたくさん知っているんだ。
そんな彼が休み時間、校庭でいつもの仲間と遊んでいると、先生や子どもたちに付き添われた小さな女の子がやってきた。佳子さまだ! 他の子どもたちがかわいらしい佳子さまと、そばに寄り添うお姉さまの眞子さまに視線を固定したまま動きを止め、遠巻きに眺めるのをかき分けて、少年は日本のプリンセス姉妹へと歩を進めた。育ちが良くて紳士の彼はもちろん、初対面ではまず爽やかに自己紹介するという上品なマナーを忘れていなかった。
「初めまして! 僕は2年生の●●です。これご存じですか? アイーン!」
クラスでも人気者の彼は突き出したアゴの下に素晴らしいキレで水平にした右手を添え、いつも学友たちに見せて喜ばれる愉快な所作で、プリンセスたちにご挨拶してみせた。大人たちの顔が瞬時にこわばり、迎賓館前の学習院初等科校庭で、時が止まった。