「心の師匠」は他部署でも社外の人でもいい

【沢渡】「ジョブ・クラフティング」という言葉があります。すべての人が、職人(クラフトマン)として仕事やキャリアに向き合う考え方です。会社に所属していても、自分を職人として捉える。すると、人間関係の軸はおのずと「尊敬できるかどうか?」となります。

師匠と弟子のようなディープな関係でなくとも、「この人のこの仕事のやり方は好きだな」「この人のこの技術はすごいな」といったライトな感覚でいい。この尊敬を軸にすると、社歴や雇用形態、年齢などは関係なくなります。年下でも尊敬できる人はいるし、年上でも尊敬できない人はいます。狭い職場の価値観から脱して、尊敬を軸に人間関係を再構築すれば、仕事にもっと前向きに取り組めるのではないでしょうか。

この「心の師匠」といえる存在が、もし身近な上司であれば、とても幸運です。しかし、残念ながらそうでなかった時、視野を広げれば、もっと上の上司や別の部署の人間、さらには同業他社や他業種に尊敬できる人が見つかるかもしれません。そうすれば、「あの人ならこんな時にこうしたはず」と、自分で考えながら仕事に向き合えるようになります。

オフィスで働くビジネスマン
写真=iStock.com/Paul Bradbury
※写真はイメージです

「この人、いいな」と思える職場に身を置くこと

――私も新人の頃、たまたまやりとりしたある企業の秘書の方のメールが素晴らしくて、文面をマネしながらビジネスメールの作法を覚えていきました。

【沢渡】「この人、いいな」と思える瞬間が増えるほど、モチベーションも生産性も自然に上がっていきます。逆に、尊敬できる人が周囲にいなければ、1人の力だけで前向きになるのはとても難しい。その意味で、やはり「仕事は職場が9割」です。

尊敬を軸に人間関係を再構築すれば、仮に尊敬できない人と関わらなければいけなくなった時、「別にこの人のようになりたいわけじゃないし」とドライに割り切れるようにもなります。人の評価や価値観はさまざまなので、上司からダメ出しされても、別の人は認めてくれる、といったケースは往々にして起こります。たまたま上司になったよく分からない誰かに判断の軸をあずけるのは、ストレスであり危険です。

尊敬できる人がいる、ロールモデルがいる職場に身を置くこと、またはそうした存在を積極的に見つけていくこと。職場を職人としての成長の場と捉えれば、人間関係のストレスもだいぶ軽減されるのではないでしょうか。

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