月額目標を達成すれば最大40万円の報奨金

齊藤がプレジデントたちに言ったのは「家業だと思ってやれ。迷ったら三喜経営に照らして考えろ」のふたつだけだ。

三喜経営とは1967年、社名をシャトレーゼとした時に制定した企業理念だ。

「お客様に喜ばれる経営」
「お取引様に喜ばれる経営」
「社員に喜ばれる経営」

新商品を開発したり、販売したりするときでも、社長(プレジデント)は3つのうち、ひとつが欠けていないかどうか考える。自分たちにとって利益が上がる商品であっても、客、取引先に負担のかかるようなものは商品にしない。

社長(プレジデント)としては迷わず経営ができる。

シャトレーゼの菓子の製造ライン
撮影=プレジデントオンライン編集部

齊藤は「社長たちが頑張ればホールディングスから報奨金を出します」と言った。

「今はシャトレーゼとグループ企業の全体で、120人ほどのプレジデントがいます。彼らが頑張っているから全体の売り上げが上がり、成長するのです。そうして、そのなかから全体を背負って立つ経営者が現れればいい。

プレジデントたちは数値目標を持っています。月額目標を達成したプレジデントには報奨金を出します。多ければ40万円になります。毎月ですよ。銀行振り込みではなく、社長から渡します。プレジデントはそれをまた部下たちに分ける。目に見える形でもらうからまたやる気が出るんです」

自分の後継ぎを探すとなると難しいが…

では、各社長(プレジデント)を束ねるシャトレーゼの社長は何をやればいいのか。

齊藤は「はい、それもまたいい質問ですね」と少し笑った。

「シャトレーゼの社長は将来を考えることが仕事です。社長というのは、現場の仕事を束ねて、今度は次の目標であるグループ売り上げ1兆円に向けてどういうことを今やらないといけないかを決める。お菓子だけでなくゴルフ場もホテルもまだまだやります。

自分の後継ぎというのはなかなか難しいです。だから細かく分けたらいい。そうしてそのなかから成功した人を将来の幹部にすればいい。社長はそのなかから出てきますよ」

シャトレーゼの工場
撮影=プレジデントオンライン編集部

インタビュー取材の後、シャトレーゼの本社工場を見学した。検査をクリアし、徹底的な消毒を施したうえで、シュークリームとデコレーションケーキの製造ラインを見た。

わたしはトヨタの工場、他の自動車工場を100回以上、見学している。工場設計者、生産技術、生産管理といった専門家と一緒にプレス工場から組み立て工場までを見学しているから、工場であればどこを見ればいいかがわかる。