思い続けることが大切
ただ、自信を持ちにくい子に、「あなたは大丈夫」といったメッセージを浸透させるには時間がかかります。それは、まるで石におでんのだしをしみこませるようなもの。それでも、親の想いはしみていくものです。思い続けることが大切です。
不登校というのは基本的に、子どもにとって人生の危機です。自分なんかが生きていていいのだろうか、なんで自分は生きているんだろうと葛藤します。
ただ、そういった葛藤はそんなに悪いものではないと思っています。
そういった葛藤を経ていくと、「なんのために生きているのか」ということが見えてきて、それに沿って生きていく人がたくさんいます。
高校生になってから、ほとんど不登校だったという映画監督の押井守さんは、その当時に考えていたことが映画作りやその後の作品の原点になったと取材でおっしゃっていました。
演出家の宮本亜門さんや、リリー・フランキーさんも、引きこもっていた時期があり、その当時に考えていたことが今の自分の原型を作っている、ということを異口同音に語られています。そういう意味では、自分を得るまたとない機会なのです。
不登校経験者の85%は進学、その後の進路は……
文科省の調査によりますと、中学3年のときに不登校を経験した子どものうち、85.1%は高校に進学しています。進学しなかった約15%の中にも、高卒認定試験を受けている人がいるでしょうから、かなりの人が進学の道を選んでいます。
小中学校で不登校になっても、多くの人は高校に行くということは知っておいてほしいと思います。「この先もだいたい大丈夫。高校にも行ける」と思えるだけで、全然違うと思います。
就職に関していえば、ありとあらゆる職業の人がいます。消防士、大工、会社員、学校の先生、弁護士、タレント。不登校だったのに「堅い職業につけるの?」と言われたりしますが、公務員になっている人もいます。
小学校の入学直後からずっと学校が合わない子がいました。彼は数年間、学校へ行っていませんでしたが、塾に通うようになると、塾の先生から「きみは私立の学校に行ったらどうか」と言われたそうです。
そして、私立の中学校へ行き、結果的には現役で東大に合格。大手銀行勤務などを経て、今は不登校や学習困難な子にも活用されているAI教材の仕事をしています。