「大寒波」なら景気の下振れは必至
今冬のヨーロッパ各国ではガス不足が懸念されており、ドイツや英国では計画停電の可能性さえ叫ばれている。暖冬ならまだしも、大寒波に襲われた場合、ヨーロッパの景気には強い下振れ圧力がかかる。
そのリスクに備えて、ヨーロッパ各国はガスの備蓄と節制に努めている。いずれにせよ、ヨーロッパの経済は今冬に一つの山場を迎える。
EUは9月9日にブリュッセルで臨時のエネルギー相会合を開き、高騰した電力料金を引き下げるための措置について検討する。一定の基準の下で企業や家計に対して補助金を出すのだろうが、短期のうちに27カ国の全てが足並みをそろえるのは至難の業だ。それにこの政策では、問題の本質であるエネルギー供給の不安定は解決しない。
経済の苦境を冬になぞらえるなら、ヨーロッパの冬は厳しく、また長期にわたると考えざるを得ない。
「脱炭素化」と「脱ロシア化」の両立を目指す以上、ヨーロッパのエネルギーコストは短期的な増加は免れず、また中長期的にも高止まりするだろう。当然、ヨーロッパの産業競争力はその分だけ低下し、経済の成長力も失われる。
それに、これまでの利上げを受けて、頼みの綱であるアメリカの景気も先行き後退局面に入ることが確実視されている。
欧州の金融不安が「危機の引き金」になりかねない
このように世界経済の成長が鈍化する状況の下で、ECBの危機対応策が機動力を欠いていることもあり、イタリアの財政問題に端を発した金融不安が、グローバルなショックの引き金になりかねない点に留意したい。
そうなった場合、ユーロは一段安を免れないはずだ。ドル高が続いた分、円が多少なりとも買い戻されるだろう。株価については、景気悪化への懸念が下押し要因になる一方で、金融緩和への期待が下支え要因になるかもしれない。いずれにせよ、さまざまなリスク要因がある中で、金融市場はボラタイル(大きな変動または乱高下の予想される相場のこと)な状況が今後も続くと予想される。
なお、ロシアとの関係悪化が嫌気されてヨーロッパの天然ガスの価格が一段高となった場合、日本がオーストラリアなどから得ている液化天然ガス(LNG)の価格にも上昇圧力がかかることにも気を付けたい。
契約の方式が異なるので影響は限定的なものになるだろうが、日本もまたヨーロッパの厳しい冬の影響から免れないのである。