「落ち着く兆しは全く見えない」深刻な欧州の物価高

米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は、8月26日に米ワイオミング州ジャクソンホールで開かれた経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)で講演した。その際、景気悪化といった痛みを伴ったとしても、インフレが抑制されるまで当面の間は利上げを継続するという方針を表明した。

一方、米国のインフレにはピークアウトの兆しが出てきている。同日に発表された7月の個人消費支出(PCE)価格指数は前年比6.3%上昇と6月(同6.8%上昇)から伸びが鈍化、前月比だと0.1%低下と2年3カ月ぶりに低下した。そのため、9月のFOMC(連邦公開市場委員会)での利上げ幅は7月の0.75%より小幅かもしれない。

いずれにせよ、FRBが当面の間は利上げを継続する方針が確認されたことから、金融市場では金利が上昇、ドル高と株安が進んだ。

こうした動きを受けて、欧州連合(EU)の中央銀行である欧州中央銀行(ECB)の高官は、9月8日に予定されている定例の政策理事会で大幅な利上げを実施すべきだという意見を相次いで表明している。

2022年7月21日、ドイツ・フランクフルトで開催された欧州中央銀行(ECB)運営理事会後の記者会見で発言するクリスティーヌ・ラガルド欧州中央銀行総裁。
写真=EPA/時事通信フォト
2022年7月21日、ドイツ・フランクフルトで開催された欧州中央銀行(ECB)運営理事会後の記者会見で発言するクリスティーヌ・ラガルド欧州中央銀行総裁。

ECBは7月の政策理事会で11年ぶりとなる利上げを実施、引き上げ幅は0.5%ポイントと、元来利上げに慎重なECBにしては大胆な措置だった。それだけECBのインフレに対する危機感は強いが、8月のユーロ圏の消費者物価が前年比9.1%上昇と過去最高の伸び率を更新するなど、ヨーロッパでインフレが落ち着く兆しは全く見えない。