ゼロコロナ政策に固執した習近平の失策

中国の景気が停滞している。7月15日に中国国家統計局が発表したテータによると、2022年4~6月期のGDP(国内総生産)は前年同期比0.4%増えたが、1~3月の4.8%増から大きく減速した。ゼロコロナ政策の結果が数字にも反映された。

2022年7月1日、英国から中国への返還25周年を迎えた香港で行われた新指導者・新政府の発足式典の後、演説を終えて手を振る中国の習近平国家主席。
写真=AFP/時事通信フォト
2022年7月1日、英国から中国への返還25周年を迎えた香港で行われた新指導者・新政府の発足式典の後、演説を終えて手を振る中国の習近平国家主席。

市民生活にも深刻な影響が出つつある。代表例は若者の就職難だ。中国国家統計局の発表データによると、中国における16~24歳の失業率は5月に18.4%を記録。前月から0.2ポイント上昇し、過去最悪を記録した。

今秋に開かれる中国共産党大会で、習近平国家主席はこれまでの慣例を破る形で、3期目を続投するとの見方がある。国家の安定を第一に掲げる習近平指導部にとって、この時期の若者の就職難と不景気という失策は手痛い。

海外メディアは「そもそもの原因は伝統的に委員会別に分散されていた権力をすべて手中に収めるべく、独裁体制を築いた習近平の落ち度だ」と厳しい見方を伝えている。

中国にも押し寄せる物価高の波

冒頭で示した通り、中国では経済成長率が急激に鈍化し、若者の失業率は過去最悪の水準に達している。さらに各国と同じようにインフレの進行も深刻な問題だ。

英フィナンシャル・タイムズ紙は中国で人気のアイスクリームを例に、インフレの実情を報じている。同記事によると一部商品が、市民の手が届かない高嶺の花となっているという。

ハーゲンダッツが高価で手の届かない中国では、国内ブランドの鍾薛高(Chicecream)が人気だ。もともと日本円にして数百円から1000円前後の高価格帯で販売され、「アイスクリーム界のエルメス」ともてはやされていた。

ところがインフレのあおりで、価格はさらに高騰している。同紙は、同ブランドのアイスを求めた現地の20代の若者が、1つに128元(約2600円)を支払ったと報じている。現地の最低賃金で働いた場合、6時間働いてやっとアイス1本を買えるという価格だ。