値上げは高級ブランドのChicecreamに限った話ではない。四川省のある大学生は、子供の頃に2元だったコンビニのアイスが、いまでは4.5倍に値上がりしていると同紙に語り、「ショックを受けた」と打ち明けている。

80社に履歴書送るも不採用、深刻化する就職事情

若者の就職事情は悪化の一途をたどっている。

このところ中国の若者のあいだで、「擺爛(バイラン)」という言葉が流行語となった。本来は「腐るまま放っておく」という意味だが、就職活動がほぼ報われなくなった現在、「努力しても無駄なので諦めた」という文脈で多用されている。

無表情で、夜の街を見つめる女性
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不況による解雇が各地で相次いでおり、一度職を失ってしまうと以前のような条件での再就職は不可能に近いようだ。英フィナンシャル・タイムズ紙は年初に北京の中堅インターネット企業を解雇された女性の悲惨な求職体験を報じた。

同記事によると、この女性は会社を解雇された後に合計80社に履歴書を送ったという。元々マネジャークラスだった彼女に見合う処遇はなく、20社ほど面接を受けるなかで示された待遇は、以前の給料と比較すると50%以上の減給と降格を強いるものだった。

景気後退の影響は、テック業界でとくに深刻だ。中国当局はネット事業の規制強化を進めており、昨年はオンライン教育が全面的に禁止された。その後、ストリーミングサイトや動画サイトを対象に監視が強化され、業界は赤字を生み出しやすい体質となっている。時流に乗る動画共有サイト大手のビリビリでさえ、レイオフに踏み切った。

就職浪人を選ぶ学生も

冷え込んだ中国の労働市場で、学生たちは一層の苦難を強いられている。中国では今春、1000万人以上の大卒者が就活を一斉に開始した。

だが、学生の中には状況の改善を見込んで、意図的な留年を試みる人も出てきているという。米国のNGO・アジア協会米中関係センターの情報サイト「チャイナ・ファイル」は、中国の求人サイト「Zhaopin」の調査結果を紹介。アンケートに回答した大卒学生のうち16%が意図的に就職を遅らせることを検討していると指摘した。

若年層の失業率が「記録的」な水準に達している点を踏まえ、同記事は「トップレベルの教育を受けている学生でさえ、厳しい競争にさらされている」と指摘した。

中国で「最も困難な就職シーズン」と呼ばれる今年の就職市場だが、1000万人以上の大卒者が就活を始めるようになったのは、中国政府の教育政策が一因となっている。

チャイナ・ファイルは、政府は大学入学者を2006年まで毎年20%という驚異的なペースで増加させてきたが、それが今となってはこれが就職競争の過熱を招いていると指摘する。現在では入学者の増加ペースは5%前後の水準に落ち着いているが、いまだに緩やかな上昇が続いている。