疲労のレベルまで数値化されるトレーニング施設

もう一つ2021年の大活躍において大きな役割を果たしたのが「ドライブライン」でしょう。シアトルにあるトレーニング施設ですが、ここには毎年オフになると数多くのメジャーリーガーが集い、指導を受けています。特徴として、最新デバイスをふんだんに使用し、全ての事象を数値化することが挙げられます。

大谷翔平が投打ともにメジャーでやっていけることは2018年の時点で自ら証明していました。ただ肘の故障により投手としての活躍が続けられなかった。故障さえしなければ、ということで彼はドライブラインに入ったわけです。アレックス・カッブなど、エンゼルスのチームメイトが複数ドライブラインに行っていたことも後押しになったのだと思います。

ドライブラインに赴いたことにより、疲労のレベルが全て数値化されるようになりました。これにより、いつ休むべきか、またいつは休まなくていいのかを具体的に本人も首脳陣も把握できるようになったということです。

「重い球」を投げることで、腕の軌道を修正する

ジェフ・フレッチャー(著)、タカ大丸(翻訳)『SHO‐TIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男』(徳間書店)
ジェフ・フレッチャー(著)、タカ大丸(翻訳)『SHO‐TIME 大谷翔平 メジャー120年の歴史を変えた男』(徳間書店)

彼は一貫して「自分はもっと多くの試合に出られる」と主張していましたが、おそらく2018年の時点ではこの主張を裏付ける数値は持っていなかったと思います。しかし、ドライブラインのおかげで全てが数値化・可視化された。そのおかげで2021年にほぼ全試合に出場できることになったのです。自らの主張を裏付けるデータが手元にあるのは重要ですね。

ドライブラインの練習内容は非公開の部分が多く、詳細は分からないですが、必ず「重い球」を投げるというのが入っています。極端な話、ボウリングの球を上から投げるなら、必ず胴体に近いところを通して投げるでしょう。そうやって、投球の際の腕の軌道を修正するというのです。最近の大谷翔平が先発登板前のルーティーンの一環で、壁に向かい何種類かの重い球を投げているのはそのためです。

大谷翔平のキャリア、野球人生はケガと挫折の繰り返しでした。決して栄光ばかりがあったわけではありません。私のようなアメリカ人記者の目から見たそんな大谷翔平の苦闘の日々を、ぜひ私の著書から感じ取っていただければと思います。

(構成=タカ大丸)
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