高校の運動部で近年、“暴行事件”が続発している。暴行が起こる場所で多いのは、寮だ。厳しい上下関係や、狭い部屋に複数人の部員が共同生活を送る環境は昔も今も変わらないのか。スポーツライターの酒井政人さんが現状をリポートする――。
甲子園球場
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野球部、サッカー部……運動部の「寮」がやばい

夏の甲子園が佳境を迎えているが、各地の予選開始前にはさまざまな問題も起きた。

例えば、2021年の春のセンバツ高校野球に出場した愛媛県松山市の聖カタリナ学園高。2022年5月に野球部寮内で殴る蹴るなどの集団暴行が起きたという毎日新聞の報道を受けて、7月、学校側が文書で謝罪した(今夏の甲子園地方予選は問題に関係のない3年生12人で出場し、準々決勝で敗退)。

振り返ると、今春、熊本県八代市の秀岳館高サッカー部のコーチが部員に暴行して大きな問題になった場所も寮内だった。かつては名門大学ラグビーチームの合宿所内で大麻栽培が発覚した事件もあった。

これではまるで“犯罪”の温床だ。運動部寮はどうなっているのだろうか。

筆者は、箱根駅伝を目指した東京農業大学時代に運動部の寮に入った。入学時(1995年)の寮は柔道部、空手部(俳優の永井大は2学年後輩)なども一緒。入寮早々に厳しい“洗礼”を受けることになる。

上京時に履いてきた新品のブーツを玄関口に置いておいたら、数時間後に消えていたのだ。油断できないぞ、と驚き、ショックを受けた。

しかも入学したときに1学年上の先輩から、「4年生は神様、3年生は天皇、2年生は平民、1年は奴隷。1年は3~4年生に話しかけてはいけない」と脅された。1年生は練習開始の45分前に集まり、グランド整備を30分するなど、雑用も課せられた。

寮生活はというと、エアコンもない9畳の部屋に男3人。奥は最上級生で1年生は真ん中が定位置だった。ベッドを置くスペースはなく、文字通り「川の字」で眠った。当然、プライベートなんてまったくない。

キッチンやお風呂など共有スペースの掃除だけでなく、1年生は陸上部内の食事当番(夕食)もあり、かなりハードだった。ただ寮費は世田谷区でありながら、1年間で7万円弱(光熱費込み)。親は大喜びしていた。

卒業後、陸上競技をメインとするスポーツライターになって、各学校の寮を訪れたが、最近は徐々にその形が変わりつつある。一方で、ひとり部屋の寮はほとんどなく、さまざまな場面で共同生活を送る現実は変わらない。男子運動部の寮生活は耳にする機会か多いが、女子はどうなっているのか。