取材にご持参いただいた明細は、PCのプリントアウトや青々としたカーボン仕様。1枚1枚に刻まれた金額が、実に多くの事実を語りかけてくる。
2009年、月給を4万円弱カット
普天間問題やいわゆる“思いやり予算”の削減問題などで注目される在日米軍基地。そこで働く女性職員(39歳)は「基地で皆が皆、こんなに貰っていると思われたくない……」と気を使う。
国内基地で働く約2万9000人の日本人の給与の財源は“思いやり予算”だ。
「給料は国家公務員に準じています。ただ、公務員全般の給与が減るときはこっちも減るんですが、逆にいいことがあってもこっちには反映されない」
1978年度から始まった思いやり予算は、99年度をピークに減少に転じた。
「00年辺りからは、年収は横ばいか、減っていると思う。2009年は月額4万円弱カットされたから、ローンを抱えてる人なんかは大変」
2010年に入って、出張費や接待の経費にうるさくなった……というのは、丸紅に勤める男性(37歳)だ。
「まあ、今まで皆が守ってなかったルールの遵守を徹底させただけですが(笑)」
一時は危機にあった同社だが、電力・エネルギー部門を中心に盛り返した。
「中途で30代前半あたりを相当採っていて、リストラは皆無。今、人事評価制度を会社側と組合とで協議中。現在は成果主義に偏ってるけど、方向としては昔(の年功序列型)に戻っていくのでは」
地方の郵便局からゆうちょ銀行本社に転じた男性(38歳)は、
「人が足りないのに、仕事の回し方に計画性がない。突発的にやり方が変わったりしてムダが多い職場ですね」
約680万円という年収は、「ヘタすると同世代の仲間の2倍」という。しかし、頻繁に飲みに出かけたり、海外旅行に行くなど若い頃に遊びすぎたツケで、貯金は200万円程度しかないという。
「政治に翻弄されてきただけに、今もツブレる心配をしています。リストラはないが、精神疾患の人が結構いる。霞が関や丸の内はどこもそう。周辺の病院は、どこも予約待ちでいっぱいですよ」
逆風はおいそれとは止められないが、それでも前に進まねばならない。月々の給与明細が、自分が確かに歩んでいるという証であってほしいものである。