もともとは長期にわたって政権を担っていたラージャパクサ一族によるバラマキ政策が、スリランカが国家破綻に陥った直接的な原因だ。それにハンバントタ港に関しては、中国の貸し手責任と同様にスリランカの借り手責任も問われるべきである。
さらにいえば、ハンバントタ港は中国にとって本当に資産性があるのか、議論の余地があろう。
「債務の罠」は中国にとっての「不良債権の罠」
スリランカから海を隔たればインドがある。そのインドと中国は是々非々で協力し、反目もする特有の緊張関係にある。8月中旬に中国軍の調査船がハンバントタ港に入港したが、当然ながらインドの強い反発を招いた。
両国が軍事的な緊張を回避したいという思惑を持つ中で、中国にとってハンバントタ港の使い勝手は必ずしもよくない。
それに、国家破綻に陥ったスリランカでは社会が不安定化している。ハンバントタ港やその周辺の治安維持のコストも急増せざるを得ないはずだが、そのコストを負担するのはもちろん中国になる。
またスリランカは、債権者に対して債務再編を要請すると考えられる。中国が簡単に応じるわけもないが、出方を間違えれば新興国の支持も失う。
ハンバントタ港でさえこの状況である。中国が「一帯一路」構想の下で投融資を行った海外のプロジェクトの多くは、中国にとって使い勝手が良くない資産が多いはずだ。
つまり、新興国にとっての「債務の罠」は中国にとっての「不良債権の罠」と裏返しである。中東欧やスリランカの事例は、そうした「不良債権の罠」の序章かもしれない。