息が切れる運動をした子どもの得点が大幅に上がる

もし、あなたが子を持つ親であり、その子が体育やスポーツにまったく興味を示さずパソコンにかじりついてばかりいるとしたら、今あなたがどんな気持ちでいるかはよくわかる。

このような研究の結果を知って、さぞかし自責の念に駆られていることだろう。そんな子どもたちに、いったいどうやって運動をさせればいいのだろうか。

まずは、楽しいと思えるような活動を本人に選ばせてみてはどうだろう。

アメリカの研究チームは、次のような試みを行っている。スポーツをまったくせず、自由時間には座ってばかりいる肥満気味の小学生たちを集めて、放課後に運動させたのだ。

子どもたちが参加しやすいように、研究者は好きな運動を自由に選ばせた。ランニングを選ぶ子ども、縄跳びを選ぶ子ども、ボール遊びを選ぶ子どももいた。

その結果、特別な勉強は一切していないのに、みな一様に算数の試験の得点が上がっていた。また活動量が増えれば増えるほど、試験の得点も高くなった。

じつは、たった20分でこのような効果があったのだが、とりわけ試験の得点が大幅に上がった子どもたちは40分以上、息がかなり切れる運動――心拍数が1分間で最大150回まで上がる運動をしていた。

効果が現れたのは、算数の成績だけではない。学校では直接教わらないが「長きにわたって人生に利益をもたらす能力」にも変化があった。

研究チームは、スポーツが嫌いで、いつも周囲からもっと運動するように言われていた肥満気味の子どもたちの脳をMRIでスキャンした。すると前頭前皮質(額のうしろにあり、抽象的思考や集中力、計画立案などの能力をつかさどる領域)が活発化していたのである。

子どもの能力を伸ばすのは、机に向かって勉強することよりも、身体を動かすことなのだ。この成果を、研究チームは次のようにまとめている。

「子どもが潜在的な能力を存分に発揮するには、身体を活発に動かさなくてはならない」

小学校に通う学童期が最も運動の恩恵を得られる

こういった調査の結果を総合的に見れば、運動が短期的にも長期的にも、子どもの脳に多大な影響をおよぼすことは明らかである。たった一度の運動で集中力が高まり、それを維持することができて、読解力も向上する。

効果は1時間から数時間続いたのち、少しずつ薄れていく。だが大人と同じように、運動を定期的に数カ月続けると(要は習慣にしてしまえば)、効果は増大して長続きする。

ここで念を押すが、どのような運動を選ぶかは大人と同じく大した問題ではない。ランニング、遊び、テニスやサッカーの試合――どんなものでも同じように効果があると考えられている。

ポイントは「心拍数を増やすこと」。だが何より大切なのは、何をして身体を動かすかではなく、とにかく身体を動かすことだ。

脳の成長という観点から、運動を積極的にさせたほうがよい年齢はあるのだろうか。

まだ詳しくわかっていないが、多くの研究データによれば、小学校に通う学童期が最も運動の恩恵を得られるようだ。