そういった問題を解決する手段は、病名をはっきりさせることや、薬を処方してもらうことだけではない。生活習慣を見直すこと、そして集中力を取り戻すためには、何を変えればいいのかについて考えるべきであろう。

科学の研究は、本当に効果のある「精神を集中するためのギア」はサプリメントでも、脳トレ用のアプリでもなく、身体を動かすことだという事実を明らかにした。本書で後述するように、脳トレには効果がないことは確認済みなのだから。

たとえ私たちの社会が、もとより身体が適応していた時代からどんどん遠ざかってしまったとしても、よく動きさえすれば、今でも身体は昔と同じように反応する。それを踏まえて、運動やそれが集中力に与える影響について考えるべきである。

本稿を読んだら、ぜひ身をもって実感してほしい。もっと身体を動かせば、物事に集中できるようになる。あなたがADHDであってもそうでなくても、また子どもでも大人でも。

集中力を脳に戻すプラン

歩くよりは走ろう。身体に負荷がかかればかかるほど、脳はドーパミンやノルアドレナリン(集中物質)をたっぷりと放出する。理想的な心拍数の目安は、最大心拍数(220から年齢を引いた数字)の70~75%だ。

たとえば、あなたが40代であれば、1分あたり130〜140回を目標にするとよい。50代ならば、少なくとも1分あたり125回には上げたい。

アンデシュ・ハンセン著、御舩由美子訳『運動脳』(サンマーク出版)
アンデシュ・ハンセン著、御舩由美子訳『運動脳』(サンマーク出版)

運動は朝にしよう。集中力を高めたければ、日中の早い時間、少なくとも午前中に行えば、その後もしばらくは効果が続く。運動してから数時間経つと、効果は徐々に薄れていく。一般的に集中力が必要なのは昼間であって、夜ではない。

可能であれば30分続けてみよう。少なくとも20分は続けたいが、30分のほうが充分な効果が期待できる。

そして、運動を習慣にしよう。集中力が(ストレスや全般的な健康状態でも)改善される効果が定着するまでには、しばらくかかる。だから途中であきらめないでほしい。成果を手にするためには、「集中力」を発揮して忍耐強く続けなくてはならない。

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