田坂広志●シンクタンク・ソフィアバンク代表。1951年生まれ。81年東京大学大学院修了。工学博士。米国シンクタンク・バテル記念研究所、日本総合研究所取締役などを歴任し、多摩大学大学院教授も務める。2000年より現職。

私の情報収集法は独特かもしれません。あるサイトをブックマークして定期的にチェックする定点観測ではなく、ザッピング的な情報探索をするからです。たとえば、「@niftyニュース」に並んでいる項目を次々にクリックすると、雑多な情報から何かが見えてくる。そんな自己組織化がおもしろいのです。

ザッピングを好むのは、私がシンクタンクという「まだ見えていないものを見る」仕事をしているからだと思います。たとえば、「資本主義の未来」を考えるのに、参考になる文献はほとんどない。自分の皮膚感覚を磨くしかないのです。

そのための最善の方法は、自分の直観を信じ、好奇心を持って仕事をすること。好奇心と確固とした問題意識があれば、必要な情報は自ずと集まってくる。情報収集の「歩留まり」を高めるのは、情報の量ではなく、問題意識という磁石の強さです。

お勧めするのは世界最高のカンファレンス「TED」のサイトですね。ここではビル・ゲイツやアル・ゴアなど、一級のスピーチをそのまま動画で見られます。時代の最先端の知を深く学べるサイトです。じつは私はネット上の文字情報は、あまり読まないのです。日々のニュースをチェックするときも、できるだけ動画サイトを利用しています。

なぜなら、動画のほうが細かいニュアンスが伝わるからです。たとえば、新聞記事に「○○氏が猛烈抗議」と書いてあっても、その場の雰囲気はわからない。しかし動画を見れば、なるほどこんな言い方で抗議したのだなと、一目瞭然だからです。

そうやって感覚を共有できるのが動画の特徴です。「ウェブ1.0」は知識を共有する革命でしたが、いま起こりつつある「ウェブ2.0」は感性共有革命です。動画や写真、音声によって、感動や感情、感覚を多くの人と共有できるようになった。だから、これからの時代は、言葉を超えた感覚や暗黙知をつかむ能力が、ますます重要になると思います。