“目に見えない資本”をツイッターで高めろ

TED/技術・エンターテインメント・デザインの分野など、世界一流著名人の公演がWEBで見られる。

私の場合、情報発信法も独特でしょう。特にツイッターの使い方は異端だと思います。まず、フォロワーに対してフォロー返しをしない。また、コメントにRT(リツイート)もしません。ただ自分のメッセージを発信するだけです。しかも、その回数が少ない。ツイッターを始めて5カ月で、約70回しかつぶやいていないのです。

しかし、これが私のスタイルです。たしかにツイッターは、日常の何気ないことをつぶやくところから始まりましたが、多様な使われ方があっていい。新しいスタイルや新たな文化が生まれ、次々に進化していくのがメディアの本質です。短い文章でも、時間をかけて推敲するのも私のやり方。回数は少なくとも、言葉の力、リズム感、美的感覚を大切に、メッセージを発信しています。

ツイッターを使って感じるのは、ヘーゲルの弁証法で言う「量から質への転化」が起こっていること。温度が100℃を超えると水が水蒸気に変わるように、量がある一定の水準を超えると、質が劇的に変化するのです。つまり、瞬時に反応が返ってくるというツイッターの即時性によって、コミュニケーションの質ががらりと変わったのです。

BillGates(ビル・ゲイツ)/マイクロソフト創業者が、ツイッターで自身の思いを語る。TEDの感想も書き込まれている。

ツイッターによる瞬間的で感覚的なコミュニケーションには、思考が浅くなるというマイナス面もあります。しかし、「この人には共感できる」「どうも嘘くさい」などと瞬時に判断することで、人間の直観が磨かれるプラスの面もある。また、文字数が限られているため、推敲することによって、言いたいことの本質を究める訓練にもなるのです。

さらに、人柄がそのまま出る、返事が出しやすいのでつながりが強化されるなど、関係を深めやすい側面もある。これは大きなメリットです。近著『目に見えない資本主義』でも書いたように、今後は、貨幣では測れない価値、すなわち、関係、信頼、評判といった“目に見えない資本”が重要になる。ブログやツイッターを戦略的に使い、こうした資本を増やしていくことも、プロフェッショナルの条件となるでしょう。