強いて言えば、得をしたのは習近平

ペロシ議長の訪台で、表面的には、面目丸つぶれ、権威失墜となった習近平総書記だが、得をした側面もある。

中国では今週末から、共産党長老らが河北省のリゾート地で今後の政治体制を話し合う「北戴河会議」が予定されている。秋の党大会で3選がかかる習近平総書記にとっては特に重要な会議になるが、アメリカ側の動きを受けて、「少しはアメリカと協調したら?」という空気は、この件で完全に立ち消えになったと言っていい。

つまり、習近平総書記は、3選さえされれば、台湾統一、打倒アメリカに向けて邁進できるきっかけができたとも言えるのである。

中国は、なかでも習近平総書記は一筋縄ではいかない。アメリカだけで制御するのは難しく、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を共有する国々の総力で対処しなければならないということである。この状況で、日本は何ができるのだろうか。

安倍元首相の「3つの功績」

7月8日、安倍晋三元首相が糾弾に倒れた。国内問題で言えば、森友学園問題に加計学園問題、それに桜を見る会での招待客や前夜祭の費用負担問題、さらにはアベノミクスの是非など、詳細な説明と総括が必要な事象は多々ある。

このことが、岸田政権が決定した安倍元首相の「国葬」に、依然として反対論が渦巻く最大の要因となっているが、同時に評価できる点も忘れてはいけない。

○バラク・オバマ大統領だけでなく、あのドナルド・トランプ大統領とも良好な関係を築き、日米同盟を強固にしたこと
○自衛隊法などを改正し平和安全法制を成立させたこと
○中国の脅威を念頭に、自由で開かれたインド太平洋を提唱し続けたこと

少なくとも、これら3つは評価されるべきで、アメリカの民主・共和両党の知人からは、今なお、筆者のもとに、安倍元首相の死を惜しむメールが寄せられるくらいである。

「中国に毅然とした姿勢を示す行動主義は、日本に対する信頼につながった」(7月10日付 仏紙「ルモンド」)

「安倍元首相ほど歓迎された同盟国の指導者はいなかった」(7月11日付 米紙「ウォールストリート・ジャーナル」)

「日本とアメリカ、オーストラリア、インドによる戦略的な枠組み、QUADは安倍氏が始まりだった」(7月13日付 韓国紙「中央日報」)

安倍元首相が亡くなってまもなく、海外のメディアもこのように報じたが、筆者も安倍元首相のレガシーの中で、外交や安全保障に関しては高く評価したい。

なかでも、韓国紙ですら評価したQUAD(日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4カ国による戦略対話)という枠組みの提唱である。