「自分で努力しない国に手を差し伸べる国はない」
「インドが動かなくても、日米安全保障条約があるのだから、アメリカが動いてくれる」
このように思う方は多いかもしれない。しかし、実際はそう簡単ではない。
安倍元首相の話に戻せば、筆者が最後に安倍元首相を取材したのは、7月6日、横浜駅西口での街頭演説であった。
「自分で努力しない国に手を差し伸べてくれる国はどこにもありませんよ。日本とアメリカの間には安全保障条約があり、強固な同盟関係もありますが、何もしない日本のために戦い、血を流すことにアメリカ国民の理解を得ることができるでしょうか」
このように強調した安倍元首相は、中国をにらんで防衛費のGDP比2%までの増額、そして憲法への自衛隊明記を熱く訴え続けた。
台湾有事の際、アメリカは助けに来てくれるか
この安倍元首相の指摘は正しい。日米安全保障条約は、軍事同盟としての日米関係が色濃く打ち出されたもので、アメリカの対日防衛義務を定めた第5条は特に重要視されてきた。
しかし、アメリカの「防衛義務」には足かせがある。というのも、アメリカが「防衛義務」を行う場合、アメリカ憲法の規定ならびに諸手続きに従うことも明記されているからだ。
つまり、大統領や国防長官の一存では決められず、最終的には連邦議会によって決定されるとうたっているのである。
議会で決めるとなると、上下両院で民主・共和両党の議席数がどうなっているか、そして、その時点での大統領への支持率や国民世論がどうであるかに左右される。
「台湾や尖閣諸島が攻撃を受けた場合、アメリカ軍は、攻撃での損失を避けるため、沖縄などの基地からいったんグアムかハワイまで退くでしょうね」
とは、元陸将、渡部悦和氏が筆者に語った見立てだが、いったん退いたあと、態勢を立て直し、日本の支援に来てくれるかどうかは、アメリカの国内事情と、「日本もしっかり防衛力強化をやっています」という自助努力の有無にかかっていると言っていい。
だからこそ、アメリカだけに頼らない枠組みが大事になってくるのである。