金融危機でも資金流出が起きない

直販投信は月々1000円から積み立てられて、信託報酬もお得!
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直販投信は月々1000円から積み立てられて、信託報酬もお得!

銀行や証券会社などの販売会社を介さず、運用会社が投資家に直接販売する直販投信が存在感を増しつつある。

先駆けとなったのは、さわかみ投信が1998年8月に運用を開始した、さわかみファンド。本格的な長期投資でサラリーマンの資産形成を応援する、という運用方針を掲げ、現在までに2000億円を超える資金を集めている。

その後、ありがとう投信、セゾン投信など、続々と独立系運用会社が設立され、直販投信を運用・販売する運用会社は現在までに9社を数える。

一般的に投資信託を購入する際には購入額の1~3%程度の販売手数料がかかるが、直販投信ではいずれも無料。保有中、ずっと負担する信託報酬も、販売会社の取り分を削減することができ、料率が抑えられている例も多い。

投資家にとっては投資コストが抑えられるメリットも大きいが、さらに魅力なのは、運用者と投資家が一体となって投信を育てる、という構造だ。

運用会社の多くは広告を出していないため、投資家は口コミや自ら集めた情報によってその存在を知り、ネットや電話を通じて口座を開設している。限られた情報の中で初心者を中心に購入者が増えているのは、直販投信が「長期投資」「資産形成」を運用方針に掲げているからだろう。一般的なファンドが日本経済や世界経済の成長をとらえる、といった方針で運用されているのとは一線を画している。

たとえば2本の投信を運用・販売するセゾン投信社長・中野晴啓氏は、「長期投資を通じて生活者の経済的自立のお手伝いに取り組むことで、投資家と安心、信頼、共感をもって結び付いていきたい」と語る。そんなメッセージを投資家に直接発信することで、販売会社から勧められたのではなく、運用方針に共感した投資家、運用手法に納得した投資家だけが集まる。

運用手法はさまざま。幅広い分散投資で安定運用をめざす投信が多いが、渋澤健会長が率いるコモンズ投信のコモンズ30ファンドでは、30年目線で、30銘柄程度に厳選投資を行う。「投資家、投資先との対話を重視することを運用方針としており、それを全うするには30銘柄が適度な銘柄数。投資家にも運用の中身が理解しやすく、分散効果を得るためにも十分な銘柄数だと考えている」(渋澤氏)という。

多くの直販投信では積立購入を行う投資家の割合が高い(コモンズ30で7割超)。また基準価額の下落時でも解約が少なく、セゾン投信では、金融危機を経ても設定以来、月ベースで購入額が解約額を上回る資金流入超が続いている。市場の急落時には解約が増えるのが一般的で、その際の解約に備えて一定の資金を留保しておくため運用の効率性が下がるといった弊害が生じる。解約が少ないのは投資に対する考え方などが継続的に発信されることで、投資家のぶれそうな気持ちが支えられるからで、運用者、投資家が一体となって投信を育てる理想形に近づける。

「投資信託は本来、投資にかける時間や資金に余裕がない人でも長期的な資産形成ができるツール。販売会社の顔色を気にせず、投資家と一対一の関係を築ける直販投信は運用者としても幸せなシステム」(中野氏)。コモンズ30、ひふみ投信など業界の精鋭が携わっている例も多い、加えて投資を生業とするプロにも購入者が多い、という事実を考えると、直販投信が「本当にあるべき運用、販売が実現できるスタイル」であることは間違いないだろう。

※すべて雑誌掲載当時