強力なファンダムを持っていることが収益に直結する

韓国ではARMYのことを、「ファンクラブ」より、「ファンダム(fandom)」という用語で呼ぶことが多い。「ファン」に「状態、地位、領土」などを意味する接尾辞「-dom」を付けたもので、ファンの集団、さらにはファンの文化全般を指す言葉だ。このファンダムも、ネットの進化がもたらした現象に他ならない。彼らは強力な関係で結ばれ、共通の価値観やルールを共有し、さらに強力なものへ発展していく。

所属事務所が管理・運営する公式ファンカフェを中心に強力な組織を作り、一糸乱れぬ動きで応援するアイドルのために積極的な消費活動をする。したがって、どれだけ強力なファンダムを持っているかが収益に直結し、彼らの活動成績を左右するのだ。

チャートインのためラジオ局に“総攻”をかける

彼らの世界進出により、このような独特なファン文化も全世界に広がっている。20年9月1日、BTSのシングル『ダイナマイト』が韓国歌手として初めて「HOT100」チャートで1位を獲得したのは、米国のARMYたちが手を取り合うようにして成し遂げたものである。彼らは米国50州の連合ファンサイトを作って組織的なサポートを展開している。

金敬哲『韓国 超ネット社会の闇』(新潮新書)
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例えば、ビルボードチャート内のBTSの順位を上げるため、韓国のARMYのように「総攻」をする。ラジオでの放送回数を上げるため、米国を5つの地域に分け、共通マニュアルを基に当該地域の放送局に絶えずリクエストする。こうしたキャンペーンは18年から進められ、今もなお米国ファンの「総攻」は続いているという。

BTSの所属事務所であるハイブは、K-POPのファンダムを1カ所に集められるグローバルなファンコミュニティをリリースしている。これには、BTSだけでなくハイブ所属アーティストの他、「BLACKPINK」など、他社所属アーティストのファンまで対象になっている。それぞれのファンは、自分が好きなアーティストのコンテンツを楽しんだり、アイドルと会話をしたり、彼らのグッズを購入したりもできる。

これまでSNSはもちろんファンカフェ、公式ショップといった様々なチャンネルが担ってきた役割が全てここに集約されているのだ。世界的なSNSに変わって、K-POPのグローバルファンダムのための新しい生態系が韓国発で生まれようとしている。

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